141号<平成30年8月22日配信>

【巻頭文】
 酒、タバコは一切やらず、ギャンブルには手を出さず、ウォーキングは毎日欠かさず30分、食事は毎食腹八分目を実行。
スキャンダルには無縁。「人にモノを勧められるほどの経験はしていない」と40歳までCM出演の依頼を断ったという。
 
 加藤剛さんのことである。TBS系テレビで放映された時代劇「大岡越前」では江戸町奉行として活躍した大岡忠相を颯爽と演じていたことが思い出される。
「三方一両損」「五貫裁き」など、大岡越前の人情あふれる「大岡裁き」は、常に庶民の心情に寄り添ったもので、配役と人柄がダブルものだった。
 
 1974年公開の映画「砂の器」(松本清張原作)では、悲しい運命を背負ったピアニスト役を名演。父親がハンセン病に罹り、生まれた村から追い出される。
父親に付いて全国を放浪する主人公。ミステリーの謎解き部分は早々に切り上げ、映画の大半をハンセン病患者の親と子に焦点を当て、差別偏見を真正面から取り上げた意欲的な作品である。
 
 また、1992年にフジテレビ系列で放送されたスペシャルドラマ「命のビザ」も忘れがたい。
激動の第2次世界大戦下。外交官として赴任していたソ連の隣国リトアニアで、ナチスの迫害から逃れてきたユダヤ人難民に、日本通過ビザを発給し6,000人もの命を救った(加藤剛演じる)杉原千畝。
 リトアニアにナチスが迫ってくる。ユダヤ人難民は、シベリア鉄道でソ連を横断して日本を通過し中米カリブ海のオランダ領キュラソーを目指す。
「日本通過ビザ」を求めてユダヤ人が日本領事館に押し掛けるが、ユダヤ人へのビザ発給の許可は本国から出ない。杉原は決断する。「命令に背いてでもビザを発給する。目の前の人達の命を見捨てることはできない」
 
 
 加藤剛さんの作品ではないが、劇場版「杉原千畝」(主演:唐沢寿明)もなかなかの力作である。
人権ひろば21「ふらっと」のライブラリーコーナーに新着DVDとして配架したので、興味のある方は「ふらっと」窓口(0857-27-2010)にお問い合せを。
 
 加藤剛さんの訃報に接し、俳優座の先輩にあたる市原悦子さんが出したコメントが印象的だった。「私と甲乙つけがたいくらいにまじめな方でした」。享年80歳。
人情溢れる名演技をもっと見たかったのだが、つくづく惜しまれる。
 
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【ふらっと便り】
 ふらっと交流スペースでは、認知症についてのパネル展を開催します。
毎年9月21日は世界アルツハイマーデーです。アルツハイマー病は、認知症の原因疾患の一つです。
この機会に、認知症への関心を高め、理解を深めて、認知症を予防するとともに認知症になっても安心して暮らせるまちをめざしましょう。
皆様のご来館をお待ちしております。
 
●『認知症啓発パネル展』
 (制作:公益社団法人 認知症の人と家族の会)         
 展示期間:平成30年9月1日(土)~9月8日(土)
              最終日の展示は午後3時まで
●『若年性認知症~若年性認知症と診断された本人と家族が知っておきたいこと~』パネル展 
 (出典:「若年性認知症ハンドブック」認知症介護研究・研修大府センター刊)
 展示期間:平成30年9月9日(日)~9月末頃まで
 
●人権ライブラリーDVD新着情報はこちらから
 
●鳥取県立人権ひろば21“ふらっと”ホームページはこちら
 
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【つれづれ日記】 ハンドルネーム:今日の一針
 多くの方々は、船戸結愛という名前を聞いた時、「聞いたことがあるけど、誰だっけ?」と思われるのではなかろうか。
 
 船戸結愛(ゆあ)ちゃんは、両親の虐待により衰弱死した5歳の女児である。寂しくこの世を去っていった結愛ちゃんのことが大きく報道されたのが、おおよそ75日前である。
 私の机の上に、結愛ちゃんが書き残した文章などが掲載された当時の新聞の切り抜きが置かれている。報道された当時、5歳の女児が必死に両親に訴えた文章に涙した人は多かったと思う。私もそうだった。
 
 それから75日。新聞やテレビで大きく取り上げられる出来事が次々と生まれた。それに合わせて、世間の話題も次々と変わってきた。人の噂も75日。船戸結愛という名前が忘れられるのは自然と言っていい。新聞の切り抜きも少々色あせている。
 結愛ちゃんの両親はどうなのだろうか。一緒に遊び、一緒に勉強してやりたかったという気持ちがどんどん強まっていると思いたい。そうでなければ、結愛ちゃんが浮かばれない。

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