145号<平成30年12月19日配信>

【巻頭文】
 「平成最後の○○」というフレーズが踊っている。この時期なら、「平成最後のクリスマス」「平成最後の大晦日」「平成最後の紅白にサブちゃんが帰ってくる!」といったところか。

 平成最後の「新語・流行語大賞」のトップテンに「#Me Too」が入った。昨秋、数々のヒット作を手がけたハリウッドの大物映画プロデューサーが、その力を背景に多くの女優やモデルに性暴力をはたらいていたことが報じられた。これを受け、女優のアリッサ・ミラノさんが同様の被害を受けたことがある女性たちに「Me Too(私も)」と声を上げるようツイッターで呼びかけたところ、ハリウッドにとどまらず、「#Me Too」というハッシュタグ(ツイッターなどで特定のテーマについての投稿を検索して一覧表示するための機能)とともに、自分の性被害を告発する女性が続々と現れ、「#Me Too」運動は一気に世界中に広がった。

 日本でもセクハラに関する報道が目立った1年だった。4月には財務省の事務次官による女性記者へのセクハラが発覚。取材中の記者に対する数々のセクハラ発言を「言葉遊び」「悪ふざけ」だと弁明したことや、財務大臣による「セクハラ罪という罪はない」等の発言や「開き直り」ともいえる態度に批判が集まった。野党の女性議員をはじめ多くの人が「#Me Too」とともに怒りを表明し共感を呼んだが、一方で、被害女性の落ち度をあげつらい、バッシングする人もいた。「新語・流行語」として認知された「#Me Too」ではあるが、日本ではそれほど大きなムーブメントにはならなかった。

 今年は、複数の大学医学部の入試において女子受験生を一律に不利に扱っていたことも発覚した。ある大学の学長は「差別ではなく男女間の補正と考えていた」「男子学生を救うという発想で補正した」と、「差別」を「補正」と釈明し、文部科学省から指摘されるまで不適切との認識がなかったことを明らかにした。こんなことは平成で最後にしてもらいたい。

 腹も立つし呆れるばかりだが、勿論、政界や大学、芸能界や報道機関が特別というわけではない。こめかみをピクピクさせながら「はあぁ?!」と言いたくなる場面はそこかしこにある。でも、黙っている、我慢している、見なかったことにしている、聞かなかったことにしている、なかったことにしている私がいる。誰かがいる。黙らされた、我慢させられた、見なかったことにされた、聞かなかったことにされた、なかったことにされた私もいる。誰かもいる。そんな私たちが土壌となって、今年のあれやこれやが起こっているのだ。

 平成「最初」の新語・流行語大賞の新語部門で金賞を受賞したのは「セクシュアル・ハラスメント」だった。約30年、人々の意識も徐々に変わり法律もできた。しかし、自分がどんな性であっても、フェアで、安心して、気持ち良く生きていける社会を築いていくためには、まだまだ課題は多く残されている。

【ふらっと便り】
 ふらっと交流スペースでは2019年1月4日(金)から『性の多様性を考える』パネル展を開催します。
すべての人が個人として、性別にとらわれず、性の多様性が認められ、自分らしく生き生きと豊かで充実した生活が送ることができるまちづくりに向けて、LGBTなど性的マイノリティに関する正しい理解を深めていきませんか?
 皆様のご来館をお待ちしています。

●『性の多様性を考える』パネル展
 展示期間:2019年1月4日(金)~1月25日(金)
 最終日の展示は15時まで

●鳥取県立人権ひろば21“ふらっと”ホームページ
http://jinkentottori.wixsite.com/jinken 

【つれづれ日記】 ハンドルネーム:金ちゃん
 先日、地元のフェスティバルで、小学校1年生になる孫を連れた同級生のAさんとバッタリと出会った。その時の会話。
 Aさん「B(私)君、久しぶり。この前B君のお話聞いたわよ、子どもの話。“自主性が大事”、“子どもを信頼してまかせよう”っていう話。そうよね、いいこと言うわね。“子どもが自分自身で決める”ってこと、とても大事なことだと思ったわ。」
 B(私)「そりゃそうだよ、何でもどんどんまかせた方がいい。自分で決められる方がいいに決まっている。ほっとけ ほっとけ。」・・・・(2人の立ち話は続く)・・・。
 立ち話が長引き、孫がもぞもぞ、そのうちぐずり始めた。Aさんは、手提げカバンから財布を取り出し、「これで好きなもの買ってきなさい。」と、孫に小銭を手渡した。お金をもらった孫は一目散にどこへやら。・・・(2人の立ち話は続く)・・・。
 しばらくして、何かを手に持ち、うれしそうに戻ってきた孫。Aさんは、孫が手にしているのがガンダムのミニフィギュアだと分かると強い口調で言い放った。「あんた、何でこんなもん買ったの! 要るだか~? これ」
缶コーヒーを飲んでいたB(私)が、思わず吹き出してしまったのは、言うまでもない。

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