137号<平成30年4月25日配信>

【巻頭文】
 MLBエンゼルスの大谷翔平選手が、アメリカンリーグ4月第1週のMVP選手に選ばれた。打者で、打率4割6分、3本塁打、7打点。投手で7回1アウトまでノーヒットの投球が対象。投打二刀流選手は週間MVP初。二刀流はどちらも中途半端になって成功しないという先入観を打破したもので、日本人として近年屈指の快挙である。
 
 今から200年前の1818年4月。日本史に大きな足跡を残した後、弟子に見守られながら73年の生涯を閉じた人がいる。1745年上総国(現在の千葉県)生まれで幼名三治郞。6歳のとき母を亡くす。家は母の弟が継ぐことになり、婿養子だった父親は三治郞の兄と姉を連れて実家に戻ったが、三治郞は祖父母と家に残った。
 
 17歳のとき、造酒屋の養子に出され、伊能忠敬と称する。伊能家は酒造り、米の取引などを行なっていたものの商売はうまくいっていなかったが、忠敬の才覚で盛り返したと言われている。
 49歳のとき家業を長男に譲り、天文学を志し単身江戸へ出て弟子入りした師匠は、当時30歳の高橋至時。20歳近く年下の至時から天文学を学んだ忠敬は、地球の大きさを求める過程で、日本全域を正確に測ることが必要という結論に達する。気になるのは、当時どのような方法で測量したかということ。
 
 忠敬は55歳(1800年)の時に第一次測量のため、蝦夷地へ向かう。このときの一行は、弟子などを加えて9人。測量の方法は、一定の歩幅(70cm)になるよう歩き方を訓練し、複数の人間が同じ場所を歩いた歩数の平均値から距離を計算するというもので気が遠くなるようなやり方。それでも毎日40kmを移動したというから、その脚力にも驚かされる。
 
 蝦夷地から帰宅後、測量データをもとに3週間かけて地図を完成。翌1801年に第二次測量をスタート。伊豆から尻屋崎(下北半島)までの東日本太平洋側の測量で、このときは、一間(約180cm)ごとに印を付けた縄を使う方法に変更。それでも作業は楽にならず、複雑な地形が多かったり、断崖絶壁に縄を張ったりと、その苦労は尽きなかったようだ。
 
 こうして、10回17年の歳月をかけて、今の測量方法とは比べものにならないほど過酷な体験を乗り越えながら正確な日本地図を完成させた忠敬だが、特筆すべきは測量を行ったときの年齢。
 江戸時代の平均寿命は、40歳~50歳といわれている。55歳から72歳にかけて日本史に残る大事業をやり遂げた忠敬は、その時代の「超高齢者」である。高齢者は、「虚弱である」「何も貢献できることはない」などの先入観があるといわれるが、日本の先人にもすでにこうした先入観を打破した人がいた訳である。
 
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【ふらっと便り】
 ふらっと交流スペースでは5月1日(火)から『あなたは大丈夫?考えよう!インターネットと人権』パネル展を開催します。
新年度になり、多くの青少年が初めてスマートフォン等を手にする時期でもあります。本展示では、インターネットを安心して利用するために、人権意識やモラルを守り、安全な利用に関する理解や関心を深めることを目的としています。みなさまのご来館をお待ちしております。
 
●『あなたは大丈夫?インターネットと人権』(出典:公益財団法人 人権教育啓発推進センター)
 平成30年5月1日(火)~5月30日(水) ※最終日の展示は午後3時まで
 
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【つれづれ日記】 ハンドルネーム:まる
 強い揺れで目覚めた真夜中。私が住んでいる地域は震度3だった。4月9日に発生した地震。島根県大田市では震度5強を観測した。
 
 私は、これまでに震度5弱から5強の地震を3度経験している。一昨年の鳥取県中部地震、2000年の鳥取県西部地震、そして1995年の阪神淡路大震災。
 
 阪神淡路大震災が発生した時、私は京都で一人暮らしをしていた。たまたま目が覚めたのでトイレに行こうかと立ち上がりかけたその時、経験したことのない強烈な揺れに襲われた。恐くて動けなかった。その数時間後、テレビのニュースを見て愕然とした。神戸にいる友だちに何度も電話をかけるが繋がらない。その間、私の家族や地元の友だちも、同様に私に何度も電話をかけていた。ようやくそれぞれの声を聞き合ったとき、安堵で涙が出た。
 
 あんなに震える思いをしても、どこかで地震が起こるたびに「ちゃんと備えをしなきゃ」と思っても、時が経てば忘れてしまったり、「きっと大丈夫」と高を括ったりしているところがあると思う。そんな自分を反省し、思わず当センター発行の人権学習資料31「災害と人権~災害に強い社会をつくるために~」を開いた春のある日。

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