138号<平成30年5月23日配信>

【巻頭文】
 5月には力強さを感じる。
 以前、県外の職場に勤めていたこの時期の、職場関係の方が持ってくる新聞紙いっぱいに広がる茶葉を思い出すからだ。鮮やかさの中に深みを感じる色、柔らかさと厚みを備える茶葉、そしてみずみずしさ。自然の恵みがもたらすパワーもお裾分けいただいた、そんな差し入れだった。
 さて、この「パワー」。「職場」と絡めると、パワーハラスメント(パワハラ)を思い浮かべる人は多いのかもしれない。
 厚生労働省が先月公表した最新の実態調査によると、過去3年間にパワハラを受けたことがあると回答した従業員は全体の32.5%(平成24年度前回調査:25.3%)。某スポーツ協会で「上司」から特定の選手・コーチに向けた幾つかの行為がパワハラ行為にあたると、第三者委員会が認定したことも記憶に新しい。
 パワハラは、その人が持つパワーを自分勝手に振り回して相手に精神的・身体的苦痛を与え、また、職場環境を悪化させる行為だ。ここで言う「パワー」は、相手と比べて優位に立てる側面を意味する。昨年より世界的な広がりをみせるセクシュアルハラスメント等の被害告発運動“Me Too”(被害の撲滅を訴える“Time’s Up”運動もある。)から伺えるそれぞれの被害背景にも、被害者が抗い難いパワーを加害者側(とされる人)が持っていた場合も少なくない。
 問題は「パワー」だ。職場には3つのパワーがあると言われる。①業務上の指揮監督や教育指導を果たすための「職務上の権限」、②仕事に関わる「情報や専門スキル」、③集団としての「団結力」である。①は、主に「上司」にあたる人が持ちえるパワーだが、②と③はその時々の状況により誰もが持つ可能性がある。そうした立場の人が、自分より権限のない、情報・専門スキルのない、集団になじめない特定の相手を自分の思い通りになるよう好き勝手な言動を取るとき、問題が生じる。
 厚生労働省による有識者会議「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」が3月にまとめた報告書では、パワハラ防止対策案の一つに、職場のパワハラ防止等に向けた雇用管理上の取り組みを事業主に義務づけることを挙げ、その効果と懸念を交えながら実現可能性について触れている。国レベルや各々の組織で、パワハラ防止のルール作りを具体的に進め・定着させることは、働く一人ひとりの「パワー(支え)」になる。
 こうしたパワハラを防止する取り組みとともに、現実にあるパワーを、人が大切にされる職場づくりに積極的に活かす考え方も必要だ。活かし方次第で、自分が持っているパワーを、相手の成長や意欲・持ち味を引き出す方向に向けることもできる。個人の感じ方や思いを尊重し多様性を活かし、誰もが排除されない、安心・安全に働ける方向に向けることもできると思う。
 「パワーを振り回したいじめ・嫌がらせ(ハラスメント)」から、「パワーを活かした配慮、気配り、メンテナンス(ケア)」へ。様々なパワーを人権尊重の視点から具体的にどう活かせるか、自分のパワーとは何か。何かのパワーを持っているだろう一労働者として探ってみたい。
 新茶の時節柄、気持ち新たに思う。
 
【ふらっと便り】
 ふらっと交流スペースでは6月1日(金)から「鳥取県立鳥取聾学校写真部『生徒作品展』」を開催します。毎年恒例の、鳥取聾学校写真部の生徒のみなさまが撮影された、若い感性に溢れる写真の数々をどうぞご覧ください。
 みなさまのご来館をお待ちしております。
 
●「鳥取県立鳥取聾学校写真部『生徒作品展』」 
  平成30年6月1日(金)~6月30日(土)  ※最終日の展示は午後3時まで。
 
【つれづれ日記】 ハンドルネーム:イルー
 うちの娘、この春から大学生。
 親元を離れ初めての一人暮らし、親として娘に対する心配事はたくさんあって、思わず口に出して言ってしまいそうになる自分を押し込めいつも通りを装っている。
 電話で元気な声を聞くと安心し、元気のない声を聞くと、娘の好きな物を作って食べさせたい、一緒に買い物に行って気分転換させてやりたいと思うが、それができない今、そうした気持ちに折り合いをつけながら新しい親子関係を築かなければと思案する。
 まずは、自分が親にしてもらったように、娘が喜び元気になる物(食材)を選び送ってあげた。
 一番喜んだのは、干しガレイ。
 山陰の魚にまさる魚はないようです。

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