143号<平成30年10月25日配信>

【巻頭文】
 秋の恒例行事で思い浮かぶのは、学校等で催される運動会。「玉入れ」「綱引き」「借り物競走」など様々な競技がある中、私が好きな競技は「全員リレー」です。徒競走のような個人種目と異なり、一人ひとりの走力の差を、様々な工夫で補えるところに魅力を感じます。「走る順番」も工夫のしどころです。
 さて、インターネットで「リレー 順番」と検索すると、「リレーの必勝法」といった趣旨のサイトを見かけます。「必勝法」の中には、「遅い人を早い段階で走らせ、速い人を後にもってくる」「アンカー、奪還組(落ちた順位を盛り返せるメンバー)、トップ、二番目、三番目といった『キーメンバー』を先に決める」など、走者の心理やリレーの流れを踏まえて紹介されます。「必勝法」が簡単に入手できる時代なのだと気づかされます。
 ただ、リレーの順番等を、あーでもない、こーでもないと自分たちでじっくり考え、実践・振り返る時間も大切だと考えます。本番までにどうすればチームとして最大限の力が発揮できるか、練習を通じてお互いに話し合い、工夫し合い、試行錯誤し、矛盾を克服していく中に、個人の力や集団の関係(協力・信頼関係、相互作用・学び合い等)の質が高まるチャンスもあると思うからです。「必勝法」を容易に取り入れることでは生まれないこうした側面も、勝ち負けを競い合う「リレー」に取り組む意義の一つではないでしょうか。
 とは言いながら、私の高校時代、チームの「話し合い」で幅を利かせていたのは、「足の速い」メンバーばかり。「話し合い」と言いつつ、実際は、陸上部だった私を含む「足の速い」メンバーの都合の良い理屈で、他のメンバーを納得させてきたように思います。「みんなで協力してやろうや!」と、「足の速い」メンバーが呼びかける言葉も、一部のメンバーにとってはむなしく響いたことでしょう。誰もがそのチームの準備や決めごとにしっかり参画している、影響し合えている実感なしに、個人の力、ましてや関係の質など高まるはずもなかったと、今にして思うことです。
 これに対し、ある幼稚園教員から伺った話があります。その教員が担当するクラスでは、運動会のリレーに向けて園児らが何度も練習を重ね、その度に走る順番を全員で話し合っていたようです。本番目前のある日。その教員は、園児らのこんなやりとりを聞きました。
 A「オレ、Bちゃんの次に走るけどいい?抜かれても大丈夫だで。オレが抜く。」
 B「(腕を振り上げ)後はまかせたー!私も負けない。A君も頑張れ。」
 2人の中にある対等性や責任感、信頼・協力関係が、この短いやりとりに凝縮されているようです。はじめの頃、他のメンバーに比べてゆっくり走るBちゃんを周りの園児らは、対等な一員として認められず、ここに至るまで紆余曲折、色々あったようです。その教員曰く、「じっくりみないと気づかない、その子らの気持ちや頑張り・努力、その変化の様子をお互いが気づき合う機会は大切にしてきたつもり。後は、子どもたち自身が自分に引きつけて共感して影響し合うようになってきたみたい。A君はBちゃんに、BちゃんはA君に。」と。
 「このようなやりとりや変化は、園児だからいえること。年齢が上がり、より勝ち負け(成果)にシビアになると難しいのでは。」と片付けるなら、リレーに限らず、状況や立場の異なる「大人同士」が成果の求められる方針を決めるとき、「お互いの存在や考え方を認め、誰もがその人なりに影響・参画し合い、納得できる結論に至る」ことは理想でしかないのでしょうか。
 私はそうではないと信じています。あなたはどう思いますか。

【ふらっと便り】
 毎年11月は児童虐待防止推進月間です。家庭や学校、地域等の社会全体で児童虐待問題に対する深い関心と理解を得ることができるよう、ふらっと交流スペースでは11月1日(木)から『子ども虐待って~不適切な関わりと無関心~』パネル展を開催します。
 また、「家族のつながり」をテーマにしたドキュメンタリー映画の無料上映会も開催します。各回お申込み先着順となっていますので、ぜひこの機会にご参加ください。お待ちしています。

・『子ども虐待って~不適切な関わりと無関心~』パネル展 
    展示期間:平成30年11月1日(木)~11月30日(金) *最終日は午後3時まで

・ドキュメンタリー映画『ずっと、いっしょ』(字幕付)
   日 時:11月22日(木)   ◆10時~(託児あり・要予約)
       11月23日(金・祝) ◇①10時~ ②13時30分~ (託児なし)
   定 員:各回30名
   申 込:必要
   連絡先:鳥取県立人権ひろば21“ふらっと”
   電 話:(0857)27-2010 Fax:(0857)21-1714
   Email:furatto@tottori-jinken.org
 ◆22日(木)は3歳以下の小さなお子さま含むご家族で一緒に見ていただけます。
 ◆託児を希望される場合は事前予約が必要です(締切:11月12日 先着5名まで)
  詳細はこちらから↓↓
  鳥取県立人権ひろば21“ふらっと”ホームページ
   http://jinkentottori.wixsite.com/jinken

  人権ライブラリーDVD新着情報はこちらから
   http://jinkentottori.wixsite.com/jinken/untitled-cfs0

【つれづれ日記】 ハンドルネーム:ぶり
 猫には贈り物をする習性があるらしい。我が家の歴代の飼い猫は、ネズミやモグラ、時には蛇を私にくれた。朝、枕元で、陽を浴びて輝くネズミの死骸と得意顔の愛猫を見つける度に、褒めるべきか怒るべきか思案したものだ。
 今、我が家にいる生後6か月の猫は、動物病院の勧めに従って室内飼いをしている。外でステキなものを見つけてくることができない代わりに、亡くなった家族が使っていた部屋に入り、祖父の帽子や祖母の匂袋、父のカーディガンなど、気に入ったものをくわえて来ては枕元に供えてくれる。私は、「これ、どこから持って来たの?」などと言いながら、しばらく故人の思い出に浸る。
 気まぐれな仔猫のサプライズ・プレゼント。次は何をくれるのか、心待ちな今日この頃である。

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