144号<平成30年11月21日配信>

【巻頭文】
 私が暮らしているのはいわゆる中山間地、鳥取県内でもかなり高齢化の進んだ地域です。隣近所も高齢者のみで暮らしている家庭が大半、中高生以外の若者と挨拶を交わすことはほとんどありません。ただ、休みの日の午前中、決まって買い物袋を抱えた4・5人の若い女性グループと出くわします。彼女たちは、私を見つけるとすぐに「シンチャオ!」と挨拶してくれます。数年前に仲良くなった別のグループは「ニーハオ!」。私が、彼女たちに以前訪れたベトナムや中国での旅の話をすると「私、その町から来ました。」と、ふるさとのことを知っていてくれてうれしい!とばかりに、はじけるような笑顔が返ってきます。近所の縫製工場で働く技能実習生たちです。
 鳥取県内で働く技能実習生は1.386人(平成29年末 鳥取県交流推進課)、外国人の在留資格別で見るとその割合はもっとも高く、近年その数は増加しています。
 今国会で大きな話題となっているのがこの技能実習制度。「特定技能1号と2号」という在留資格を新設し、生産労働人口の減少に伴い外国人労働者の受け入れを拡大するため入管難民法などの改正案が衆議院本会議で今日から実質審議入りします。政府案としては、建設や農業、また介護や観光などの14業種で、2019年度の1年間に最大約4万7千人、5年後に最大約34万5千人を見込んでいます。
 また、東京商工リサーチの調査によると、人手不足関連倒産は前年同期比20.4%増、近年、最悪だった2015年を上回るペースで進んでいます。鳥取県等の地方では特に高齢化率は高く、人手不足は深刻です。高齢者の雇用を推進するとともに、外国人の就労を含めた長期間の滞在を可能にする制度の新設は必要でしょう。
 ただ、技能実習制度は本来、国際貢献を目的に創設されたものです。ところが実際は、安い労働力の確保を目的として利用されることも多く、低賃金や違法な長時間労働、賃金不払い等、また、預かると言って実習生のパスポートを取り上げたり、外出を極端に制限したり等の問題も後を絶ちません。私も実際に技能実習生本人から「ハラスメントを受けている」との相談を持ち掛けられたことがありました。
 昨年度、「技能実習適正化法(註)」が施行され、禁止規定や罰則が設けられました。しかし、その後も「三菱自動車工場で計画書と異なる内容の仕事をさせていた問題」が発覚する等、実習生が働く環境の改善が大きく進んでいるとは言えません。新たな制度の法制化にあたっては、長期間の滞在を見越した医療保険や年金等の取り扱い等も含め、丁寧な議論を進めていくことが必要でしょう。それとともに、地域で暮らす住民の一人として受け入れられるよう、企業をはじめ地域や学校でも連携しながら、人権尊重のまちづくりに取り組んでいきたいものです。

(註)正式名称は、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」。

【ふらっと便り】
12月のふらっと交流スペース展示のご案内です。
 ★『白兎養護学校 小・中学部生徒 美術作品展』
   展示期間:平成30年12月1日(土)~12月22日(土)
  毎年好評の、白兎養護学校生徒の皆さんによる美術作品展です。
  元気いっぱいの作品の数々をどうぞご覧ください。

 ★『拉致問題パネル展』
   展示期間:平成29年12月1日(土)~12月20日(木)
        最終日は正午まで
 米子市出身の松本京子さんが北朝鮮に拉致されてから40年以上が経過し、ご家族や関係者の方々も高齢となられています。一日も早い拉致被害者全員の帰国を求め、拉致問題を考える機会に是非ご覧ください。

●鳥取県立人権ひろば21“ふらっと”ホームページ
 http://jinkentottori.wixsite.com/jinken 
●人権ライブラリーDVD新着情報はこちらから
 http://jinkentottori.wixsite.com/jinken/untitled-cfs0

【つれづれ日記】 ハンドルネーム:アイスコーヒー
 先週のある日。妻のいくつかの「つぶやき」に、なるほどな~と思いました。
①家から外に出る時
「夏の暑い日はイライラして怒りが沸いてくるのに、寒いときは悲しくなる・・・」
②仕事から家に帰るとすぐさま靴下を脱ぐ妻に、「何で?」と尋ねた時
 「『今日はもうこれで仕事はおしまいや!』っていう証。」
③夕食時、妻が勤める幼稚園の園児の様子を聴いている時
 「子どもたちをじーっとみてると、何かあるわけでもないのに口を動かしてて、何をしゃべっている
んだろうと思って近づいたら、歌を歌ってた。いたるところで何人もだよ。あなたみたいに!」
④夕食後、テレビで、あるグルメリポーターを紹介するナレーションを聞いた時
 「ナレーションで、「今日も腹ペコの●●さん。」って言うけど、●●さんがいつも腹ペコだと思うなよ!」
 素直に繊細に、ものごとをみつめているな~と思いました。同時に、こうした何気ない、けれどもきわめて「まじめな」つぶやきに共感できる自分であることも嬉しく思いました。
 ただ、よくよく考えると、これまで共感できるつぶやきだけきこうとして、共感できないつぶやきはきこうとしなかっただけだったのかも・・。
 と思ったとき、少し心がざわつき、ひやっとした木枯らしの秋。

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