153号<令和元年8月28日配信>

【巻頭文】
 先日実家に帰省した際、父から尋ねられたこと。
「●●(私の名前)は、★★(弟)みたいに文章を書いたりしちょうか?ツイッター?」
「ラジオでまいこと歌う歌手がおーが、スマホで(その歌手を)みられーか?」
父はパソコンやスマホを使ったこともなければ、携帯メールを送ったこともありません。
 79.8%。 今日、インターネット(以下、ネット)利用者はおよそ8割(註1)に上ります。ネットを利用したことのない人でも、ネット上の様々なサービスについて見聞きしたり、知らない内にネットの中に自分の名前や写真が掲載されていたり、自宅の住所を入力すれば地図で場所が表示される、そんな時代です。去る5月に、国の行政手続きを原則ネットで受け付けられるようにする(地方自治体は努力義務。)ことを定めた、「デジタルファースト法(註2)」が成立したことも、「ネット社会」を実感させられる出来事です。
 しかし、ネット利用には多くの人権問題がはらんでいます。
 匿名を盾にした個人に対する誹謗中傷や侮辱にあたる書き込み。職場内の関係性がネット上にまで及んで行われるいじめ・嫌がらせ(ハラスメント)。故意かどうかはともかく、個人が公開を望まないプライバシーに関わる情報をネット空間に載せる行為。特定の属性の人に対する差別心をあおるようなデマ等を流す行為。ここ近日では、茨城県の常磐自動車道で、男性があおり運転をされたあげく暴行を受けた事件の後、ネット上では容疑者の車に同乗した女性を特定したとして、事件とは無関係の女性の名前や写真が晒され、「犯人」扱いされるというデマも流れました。
 ちなみに、鳥取県が実施した最新の人権意識調査(平成26年5月調査)によると、日常生活の中で差別や人権侵害を受けたと思ったことがある人(16.8%)の内、具体的な人権侵害-被害経験の種類として回答された上位5つは次のとおりです。
① あらぬ噂、他人からの悪口、かげ口
② 職場での嫌がらせやいじめ(パワーハラスメントを含む)
③ 名誉・信用の毀損、侮辱
④ 差別待遇(人種・信条・性別・社会的身分等による不平等・不利益な取扱い
⑤ プライバシーの侵害
 これをみると、ネットは様々な人権侵害を引き起こすツールとして用いられている可能性が窺えます。そして、簡便かつ匿名性をもって伝えられるネットの特性が、人権侵害への「敷居」を低くしているのではないか、そんな心配もあります。
 ある意味、一人ひとりが持つ人権感覚・人権意識の身近な活かしどころの一つが、ネット上のやりとりとなりつつある今日。他者の人権を侵害しない、また、自分の人権を守るよう安全に使いこなす責任が私たちにはあります。そう意識しながら、次に帰省した折には、父と一緒にネットを生活の豊かさに役立ててみたいと思います。
 註1:総務省『平成30年通信利用動向調査』より。
 註2:正式名称は、「情報通信技術の活用による行政手続等に係る関係者の利便性の向上
    並びに行政運営の簡素化及び効率化を図るための行政手続等における情報通信の
    技術の利用に関する法律等の一部を改正する法律」(5月31日公布)。

【ふらっと便り】
◆ 9月“ふらっと”交流スペース展示のご案内 ◆
   『性の多様性を考える』パネル展
◆ 新入荷DVD情報 ◆
   『ユマニチュード 優しさを伝えるケア技術 認知症の人を理解するために』
    (全編フランス語 日本語字幕 ドキュメンタリー 120分 2015年制作)
   『アゲハがとんだ―1945・3・10東京大空襲―』
(字幕あり アニメーション 20分 2019年制作

【つれづれ日記】  金ちゃん
国際交流プログラムで、鳥取県を訪れている世界各国からの若者数人を引き連れて山と海に分け入った。残暑厳しい中、最後の力をふり絞って蝉が鳴いている。私が真似をしてみせる。「つくつくぼ~し、つくつくぼーし」。インドから来た若者がこれに続く。「オーーシャカシャカ、オーーシャカシャカ」?? ギリシャから来た女性「フニフニ、シューン、フニフニ、シューン」???・・・・とまあ、こんな具合。
 皆で、日本海に沈む真っ赤な夕陽を見送った後、辺りは漆黒の闇に。しばらくすると、草むらから虫の大合唱が始まった。まず、私。「スーイッチョン、スーイッチョン」。みんな目を丸くして顔を見合わせる。一呼吸あった後、それぞれの真似が始まった。「ルルルーーパン、ルルルーーパン」「●※!○※!●※!」「???△■???△■」もう何が何だかわからない。みんなで大笑いした夏の日の思い出。やわらかな潮風が頬を撫でていく。

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