154号<令和元年9月25日配信>
【巻頭文】
「多様性」への理解と受容は、人権について学び行動する上でとても大切なことの一つです。私たちの暮らす社会は人種、性別、年齢、障がいの有無等、様々な人々で構成されており、それぞれが長年、自分流の生活スタイルを守りながら、また周囲の環境に影響を受けながら暮らしています。
私の故郷は鳥取県の山間部にある小さな町です。ここで、地域づくりの一環として、都会から若者を呼び込み地元の人との交流を促進する活動をしています。この取り組みによって、入れ替わり立ち替わり都会から若者がやって来ては、地元の高齢者と触れあったり、地域の行事に参加したりしています。
先日、生まれも育ちも東京で今もマンション暮らしの女子大学生Aさんが我が町に長期滞在をしました。Aさんは何事にも積極的で、欧米を中心に世界20数カ国を巡った経験もあるとのこと。海外では様々な異文化体験をしているAさんですが、日本の田舎暮らしは初めてです。田舎で生まれ育ち、長い人生を過ごしてきた高齢者等と対面しその生活スタイルや言動に少し面食らったようです。
車で30分足らずの鳥取市街に出るために一張羅の洋服をわざわざタンスの奧から引っ張り出してくる人。「若い女性が一人でこんな田舎に来るもんじゃない」と説教する人。松茸をとるための権利を入札で落としたことを子どものように喜ぶ人、等々。
また、タイミング良く、地域の総会に参加してもらったときのことです。そこで話合われている内容にもびっくりしたようです。「農道や畦の一斉草刈りについて」「水道組合所有の老朽化した施設を今後どうするのか」「神社役員の分担や寄付金の集金」「同和問題について話し合う会合について」等々、東京でのマンション暮らしでは決して知ることのないものばかり。Aさんは目を丸くして「ここは日本ですか? 海外より異文化体験しています。」等の感想を残していきました。Aさんにとっては、世の中の「多様性」を感じとれる有意義な経験になったのではないでしょうか。
地域を超え、年齢を超え、じっくりと語らい、その人となり、生活や価値観等に触れることで、今まで自分が知らなかったことを学ぶ機会は、あちこちに転がっています。ただ、それをしっかりと受け止められる感性が宿っているかどうか、自分自身に問い続けていきたいものです。
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【ふらっと便り】
◆10月“ふらっと”交流スペース展示のご案内◆
『認定NPO法人十人十色 利用者アート作品展 ごっつ!ええがなぁ~』
◆新入荷本情報◆
『セクハラ・サバイバル(わたしたちは一人じゃなかった)』
(著:佐藤かおり/出版社:三一書房)
『格差と不平等を乗り越える 教育事始』
(著:外川正明/出版社:解放出版社)
『おんなたちは鬼になる:消費者運動、原発、平和』
(著:富山洋子・神田浩史/出版社:解放出版社)
『認知症の方の想いを探るー認知症症状を関係性から読み解く』
(著:伊藤美緒/出版社:介護労働安定センター )
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【つれづれ日記】 梨
スポーツ、というよりも運動の秋としたい今秋。たまに通うスポーツジムでは、もっぱらランニングマシーンで汗を流す。
はじめは、機械の速度を時速2.1~2.7㎞に設定して歩く。その後、設定速度を上げるにしたがい、運動は、早歩き、ジョギング、ランニングへ。そして最後の3分間。こもってきた体内の熱を一気に発散させるように、汗を流して懸命に走る。
最後の3分間。私は、横並びで走る他の利用者を見渡しながら、誰よりも活発に走っていると感じていた。妻から「今日もあんなにのんびり『優雅』に走って、本当に運動になるの?」と言われるまでは。
自己評価と他者評価が一致するとは限らない。だからこそ、そのギャップを考察して次に活かすことは大事だと思う。
とは言え、自分の中では間違いなく「頑張った」「大変だった」実感があるのだから、ひとまずは、そんな自分をねぎらってあげることも、運動後の、また、何かをやり遂げた後のケアとして欠かせない。
ケアしてますか?