157号<令和元年12月26日配信>

【巻頭文】
 高齢者介護の現場において、高齢者虐待に並ぶ深刻な権利侵害の問題に、ようやく光が当たり始めた。介護職員が利用者やその家族から受けるハラスメント問題である。
 近年、介護現場におけるハラスメントについて実態調査や事例収集が行われ、2019年3月には厚生労働省が立ち上げた調査研究委員会が「介護現場におけるハラスメント対応マニュアル」を作成した。事例には、身体的暴力、精神的暴力、セクシュアルハラスメントがあり、中には暴行罪、傷害罪、脅迫罪、強制わいせつ罪等に当たりかねない行為も含まれている。ハラスメントを受けた経験のある職員は、サービス種別により違いはあるものの、利用者からでは4~7割、家族等からでは1~3割となっている。
 ところが、ハラスメント防止策を講じている介護事業者は半分以下に留まる。対応が遅れている背景にはさまざまな要因が考えられる。例えば、「相手は高齢者なのだから責めても仕方がない」あるいは「介護のプロとしての覚悟や技術が足りない」といった、加害者を擁護し、逆に被害者に対して責任を問うような意識がある。かつて、セクハラという言葉が社会に登場する前、女性職員は男性の顧客に身体を触られても、「相手は客。笑ってやり過ごせ」「隙を見せたあなたが悪い」と言われ、被害に遭った責任も対処も被害者個人が負わされた。介護現場のハラスメントも同じ轍(てつ)を踏んではいないか。
 加えて、社会全体が介護現場に対して、「高度な知識と技術、心のこもった細やかなサービス、かつ、簡素で効率的な業務」という至難の要求をする一方で、介護職員の雇用条件や労働環境に対してはあまりにも関心を払ってこなかったことがある。
 ハラスメントを受けてケガや病気をした職員は1~2割、離職を考えた職員は2~4割。政府は介護職員の不足に備えて、外国人労働者を増やす考えだが、その前に介護職員にとって安心で働きがいのある雇用・労働環境を整えることが不可欠である。
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【ふらっと便り】
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    (著:朝治武/出版社:解放出版社)
  『ネット暴発する部落差別:部落差別解消推進法の理念を具体化せよ』
    (著:北口末広/出版社:解放出版社)
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【つれづれ日記】     ハンドルネーム : ひまわり
 先日、当センターの忘年会で「自分の今年を漢字一字で表す」ということで、皆が思い思いの漢字を出し合いました。 私は、「笑」です。なぜなら、笑う努力をしたおかげで、今年一年元気で暮らせたと思うから。以前、胃がんの手術をしました。その病床で読んだ本に、笑うことによりNK(ナチュラルキラー)細胞が増殖して、自然免疫を高めると書いてありました。NK細胞は、がん細胞を攻撃する兵隊役だそうです。当時は、死ぬ確率の高いがんになったというショックもあり藁をもつかむ思いでその記事を信じ、くよくよしないで笑って生活するよう心掛けてきました。そのおかげか17年経った今も元気に過ごしています。
 期せずして、このたび姉がわたしと同じ病で治療を受けました。麻酔からさめた姉の第一声がなんと「吉本のお笑いを見ていて笑っていたのに途中で目が覚めてしまって残念だった」というではありませんか。待機していた私は本当にびっくりしました。退院後の私が笑いのある生活をしたいという思いから、連れ合いと一緒に吉本新喜劇を見に大阪まで行って笑って帰ったことと似たようなことが、姉の夢の中で起こったではありませんか。ひょっとして、私の笑いの体験を聞いていたのが姉の心に浸み込んでいて、この場におよび思い出されたのではないだろうか・・・・。それは全く分からないけれど、姉の助かりたい、もう少し生きたいという執念の現れではないかと想像します。
 「笑う門には福来る」という諺にもあるように、「笑う生活」は、心と健康に良い効果があるということですね。治療後の姉は、まだ、三日しか経っていないのに元気でおしゃべりしまくっています。
 「笑い」というテーマに心を寄せた令和元年もあとわずかとなりましたが、来年も笑いに包まれた幸せな年になるよう努力しようと自分に言い聞かせています。そして、社会が様々な不幸に見舞われた一年でしたが、来年は地球上の人々が幸せに暮らせるよう祈るとともに、私にできることを実践していきます。

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