160号<令和2年3月25日配信>
【巻頭文】
春の訪れは「ケーッ!」の鳴き声とともに。
この時期になると、近所の草ぼうぼうの元芝畑から鳴き声が聞こえてくる。早朝、身支度を整えている時に聞こえることが多い。こちらもたまに「ケーッ!」と応じる(勿論、小さな声で)。めったに姿を見ることはないが、以前、背の高い枯れ草の中に佇む雌と、てててててーっと道路を横切る派手な色の雄を見かけた。そう、雉だ。
雉の繁殖期はだいたい3月~6月で、この時期に雄が「ケー」とか「ケンケン」などと鳴く。これは、他の雄に対して自分のなわばりに入らないよう警告したり、雌に自分の存在を知らせたりするためだという。そんな雉は日本の国鳥であり、狩猟が認められている鳥でもある。
「雉も鳴かずば撃たれまい」という言葉がある。これは、無用の発言をしたばかりに自ら災難を招いてしまうことのたとえだ。鳴かなければ、猟師に撃たれることもないだろうに、と。
この言葉、私はどうにも引っかかる。
雉が鳴くこと、つまり、なわばりを守ろうとしたり求愛したりすることは、雉にとっては「無用なこと」でも「余計なこと」でもない。「鳴かなければ撃たれないのに」なんていうのは、人間の勝手な言い草だ。「いじめられるのはそれなりの理由があるんじゃない?」「そんな格好しているから襲われたんじゃない?」など、「あなたこそ悪いんじゃないの?」と被害者に責任を転嫁し、加害者を容認する発言と同じに思える。差別や人権侵害、不正に対して声を上げる人に冷や水を浴びせ、弱者を黙らせようとする圧力にも通じている気がする。
大事な声や切実な声が「無用扱い」されない社会をつくるために、私たちがすべきこと、できることは何か?新年度を迎えるにあたり、雉に叱咤激励されている気がしないでもない…。
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【ふらっと便り】
◆ 4月 ふらっと 交流スペース展示のご案内 ◆
①『世界自閉症啓発デー inとっとり with ふらっと 2020』
<主催>困り感を抱える子を支援する親の会/らっきょうの花
展示期間:令和2年4月1日(水)~4月14日(火)
②『フツーの人の「自覚無き差別」~「差別があり続ける社会」を支えているのは?~』
鳥取県人権文化センター 新作人権啓発パネル
展示期間:令和2年4月15日(水)~4月28日(火)/最終日の展示は午後3時まで
◆ 新入荷本情報 ◆
『ぼくは、かいぶつになりたくないのに』
(文:中村 うさぎ 絵:こうき/日本評論社)
『ひとりひとりの「性」を大切にする社会へ』
(著:遠藤 まめた/新日本出版社)
『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』
(著:上間 陽子/太田出版)
◆ 新入荷DVD情報 ◆
『シリーズ映像で見る人権の歴史 第7巻 水平社を立ちあげた人々
―人間は尊敬すべきものだ-』
(字幕あり 解説 17分 2020年制作)
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【つれづれ日記】メイプル
年末ジャンボ宝くじが当たった夢をみたので、その日のうちに買いに走った。一昨年のことである。
翌日、一通の封書が自分宛に届いた。内容を要約すると、「厳正なる抽選の結果、あなたが見事当選されました。今後の手はずは追って連絡しますので、それまでお待ちください。なお、当選したことは口外しないように願います。」
さてどうしたものか。応募した覚えがないのに、当選したという。うまい話には必ず裏があるものだ。まあ、もう少し待ってみて、相手の次の出方を確認してから対応を考えるとしても遅くはないだろう。
そんなことがあって、当選の手続きはまだかと時々思い出しながら過ごしているうちに一年以上が経過した。発信元に問い合わせたところ、当選の効力は今年2月で消滅したので、無かったことにしてくださいという。司法制度に国民の一人として社会参加できる又とない機会だったのだが。
さて、宝くじは、当選金として売り上げの約半分が支払われ、残りは収益として公共事業等に使われる。正夢と信じて買った宝くじだが、そんなに都合良く当選するはずもなく、別の形で社会貢献したことになったという次第である。