161号<令和2年4月22日配信>
【巻頭文】
新型コロナウイルス感染症には、現在のところ、これといった特効薬やワクチンは開発されていない。不要不急の外出をせず、ウイルスを「人に移さない」「人から移されない」ことが、感染拡大防止の唯一の方法だ。できることは限られるが、全ての人が、心を一つにしてウイルスに立ち向かうことが必要である。また、人権の視点から重要なことは、ウイルス感染症の治療と拡大防止に全力を注いでいる医療関係者や罹患した人への偏見や差別につながる言動をなくさなければならないということだ。
中国の武漢から発生した新型コロナウイルス感染症は、瞬く間に欧州のイタリア北部に広まった。今から、遡ること約700年、舞台はフィレンツェ。詩人ジョヴァンニ・ボッカチョが、「デカメロン」という物語を書いている。(メルマガ読者の年齢層によっては少年隊の「デカメロン伝説」の方に馴染みがあるかもしれないが)言うまでもなく、デカメロンは果物のメロンとは全く関係の無い物語で、物語中にもメロンの話はない。
実は、ギリシャ語の「10日(Deka hemerai)」に由来したタイトルで、この「10日」という日数は物語のキーワードになる。1348年にイタリア各地でペスト(黒死病)が流行した際、難を逃れるため、郊外の豪邸に引きこもった貴族ら10人が順番にテーマに沿って面白い話を毎日1人1話、10日間にわたって繰り広げたものを一冊(100話)にまとめたものがデカメロンである。一言でいうと、「男女10人のすべらない話」といったところか。語り手が高貴であるがゆえに、何とか品格が保たれているが、セクハラ、浮気、だましあいなど、その内容を紐解けば、週刊誌のゴシップ記事のような話が溢れている。
では、なぜデカメロンが有名なのか。その一つに「イタリア散文芸術の始まりだから」という説がある。日本でいう五・七・五のように、それまでのイタリア文学には、ありとあらゆるルールがあったが、デカメロンはそれらを取り払い自由に展開される愉快で下世話な話で構成されている。ルネサンス期に興った自由な雰囲気も手伝って、デカメロンは、その後の世界各国の作家に多大な影響を与えている。この影響を受けた代表的な作家がシェークスピアである。
新型コロナウイルスの潜伏期間は最大14日といわれている。この期間、不要不急の外出を控えて、家庭内で日頃不足しがちなコミュニケーションを補っては如何か。厄災は人類の英知によって克服し、2020年の年の瀬は明るい気分で迎えたいものである。
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【ふらっと便り】
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◆新入荷DVD
・『シリーズ映像でみる人権の歴史 第7巻
水平社を立ちあげた人々-人間は尊敬すべきものだ-』
上映時間17分 2020年制作 解説
◆新入荷図書
・『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』
著:ブレイディみかこ/出版社:新潮社
・『♯黙らない女たち
インターネット上のヘイトスピーチ・複合差別と裁判で闘う』
著:李 信恵 著:上瀧 浩子/出版社:かもがわ出版
・『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』
著:上間 陽子/出版社:太田出版
・『はじめよう!SOGIハラのない学校・職場づくり
:性の多様性に関するいじめ・ハラスメントをなくすために』
編集:「なくそう!SOGIハラ」実行委員会/出版社:大月書店
・『うちの息子はたぶんゲイ(2)』
著:おくら/出版社:スクウェア・エニックス ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ?
・『いつまで続く「女人禁制」排除と差別の日本社会をたどる』
編著:源 淳子/出版社:解放出版社
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【つれづれ日記】 ぶり
新型コロナウイルス感染拡大で世界が大揺れする中、うちの職場も3月下旬からずっとバタバタが続いている。各事業の推進方針を作り、在宅ワークのためのインフラとシステムを準備し、自宅勤務の要領と出勤のシフト表を作ったが、状況がどんどん変わるので、一度作った方針も次の日には改定しなくてはならない。
帰宅すると心底ぐったり。玄関で出迎えてくれる飼い猫に癒やされる毎日である。ところが、先日、人から猫や犬、トラに感染したと考えられる症例が複数あるとの情報がネットに載った。これは一体、事実なのか?デマなのか?…まずは事実確認のうえ、我が家の「癒やし」の感染予防策も練る必要があるかもしれない。