165号<令和2 年8月26日配信>

【巻頭文】
 今月8日に「新型コロナウイルスからみんなを守る鳥取県民宣言」が出された。私たちが闘う相手は「ウイルス」であって、「人間」ではない~同宣言より。お互いの人権を尊重しながら、この難局を乗り切りたいものだ。
 コロナ関連で言えば今、疫病を鎮めるとされる妖怪「アマビエ」が人気だ。全国各地で関連グッズが生まれ、厚生労働省も感染防止を呼びかけるキャラクターに採用した。そんな中、妖怪研究家として知られた水木しげるの昭和時代に描いたアマビエが脚光を浴びている。
 東京・調布市の水木プロダクションが「現代の疫病が消えますように」と、水木氏が描いたアマビエの原画をツイッターに投稿し、24万件の「いいね」がつく反響を呼んだ。水木プロによれば、この原画は水木氏が昭和59(1984)年発行「水木しげるの続・妖怪事典」(東京堂出版)のために描いた。その後も「日本妖怪大全」(講談社)「ゲゲゲ妖怪ずかん2」(小学館)などに収録され、テレビアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」第5シリーズ(2007~09年)に鬼太郎の仲間として登場した。最近では、小学館が全学年向け雑誌「小学8年生」のホームページに、この原画を利用した塗り絵を掲載し、人気になっているという。
 水木氏がアマビエを描く際に参考にしたのは、江戸時代後期の瓦版。弘化3(1846)年、肥後国(現在の熊本県)の海中に毎夜光る物が出現し、役人が現地に赴くと、アマビエが姿を現した。「当年より6年の間、諸国は豊作だが、病も流行する。その時には私の写しを早々人々に見せよ」。そんな予言を残して海中に入ったと瓦版は伝えている。
 菱形(ひしがた)の目に、鳥のようなくちばし、長い髪、鱗(うろこ)がある半魚人風の体。水木氏の絵は、瓦版のアマビエの風貌にほぼ忠実だ。「続・妖怪事典」では、瓦版の内容に沿った解説に「海中からいきなり出てきて予言などというのはやはり神に近い妖怪なのであろう」と綴っている。歴史に埋もれていたアマビエを、すでに昭和時代、「予言」とともに広く伝えていたのは驚きである。
 アマビエブームは、一刻も早く新型コロナの終息を願う人々の切実な気持ちが伝わってくる。アマビエの出現が伝えられた江戸時代よりも医療技術は、はるかに進んだように見えるが、有効なワクチンができていない現状では現代人も同じ立場に立たされている。
 「私の写しを早々人々に見せよ」と海中に消えたアマビエ。その言葉どおり、36年前に「写し」を描き、作品を通じて広めた水木氏。コロナ禍で作品が再び注目されている「現世」を、「あの世」からどんな思いで見ているのだろうか。
 しかし、このアマビエ、どこかで見たことがある、と思っていたら意外と身近にいた。当センターのマスコットキャラクター「ふらっチョー」だ!誰かが気付いて、思わぬときに脚光を浴びるかもしれない。
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【ふらっと便り】
◆ 9月 ふらっと 交流スペース展示のご案内 ◆
  『自死対策パネル展』
  鳥取県福祉保健部健康医療局健康政策課
  展示期間:9/1(火)~9/30(水)(※最終日の展示は午後3時まで)
◆ 新入荷DVD ◆
  『なぜ公正採用選考は基本なのか』
   上映時間25分  2019年制作  ドラマ
   『違法な質問を見抜く~面接で就職差別を判断する~』
    上映時間22分  2017年製作  ドラマ・解説
  『家族の介護が心配です~仕事と介護を両立させる秘訣~』
   上映時間23分  2019年制作  インタビュー・解説
◆新入荷図書◆
  『部落差別解消推進法を学ぶ』
   著:奥田 均/出版社:解放出版社
  『デコちゃんが行く』
   著・編:いの まちこ/出版社:静岡新聞社
  『Shrink~精神科医ヨワイ~①・②』
   著:月子  原著:七瀬 仁/出版社:集英社
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【つれづれ日記】  イルー
 新型コロナの影響で県外の大学に進学している娘がオンライン授業のため4月からずっと鳥取で生活している。今までは帰省しても慌ただしく用事だけ済ませ帰っていたが、今回は時間をかけて鳥取を満喫している。たまに帰ってきても「何も変わらないなぁ」と感じていた風景が、実は地元活性化のために活動されている方がたくさんおられることが分かり、その方々の話を聞くことで地方の魅力を感じている。
 今大学3年生、就職活動もままならない事に焦りを感じていた時期もあったが、このような期間があったことで将来についての方向性を整理できたようだ。コロナのせいにして諦めることより今できること学べることを大事にしたいと前向きに活動している娘を応援する日々です。

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