168号<令和2 年11月25日配信>

【巻頭文】
 5年前だろうか。書名を忘れたが、ある本の一文に衝撃を受けた。おそらく、次のような趣旨だったと思う。
 「初対面の人に、年齢や私生活について尋ねるのは失礼だというのが大人社会のマナーとされる一方で、私たちは初対面の子どもに挨拶がてら『歳はいくつ?』『普段、誰と何して遊んでいるの?』と尋ねている。」大人は、その子どもと打ち解けたいと思い親しげに優しく尋ねるだろう。言い渋る子どもには、「恥ずかしいのかな」と思いつつ、また優しく尋ねる。傍にいる子どもの家族が、「ほら、何歳だっけ?」と促すことも。ただ、そこで尋ねた内容は、ある子どもにとって、今この場では、言いたくない、知られたくないことかもしれない。大人社会、職場であれば、何らかの優位性を背景に、何度もしつこく個人の私的領域に干渉しようとする「パワハラ」行為と断じられるかもしれない。
 「子どもに年齢などを尋ねてはいけない」ことが言いたいわけではない。子ども一人ひとりの感じ方や考え方、その事情を、大人のそれと比べどれほど考えていたかと振り返り、ハッとさせられた。
 「いま何歳(いくつ)? 黙秘通す子 それもあり」という心境だ。
 話は変わり、国立成育医療研究センターのコロナ×子ども本部が実施した「コロナ×子どもアンケート(第2回)(6月15日~7月26日)」の中に、子ども(981人)に対し「子どもの意見は反映されているか」を問う質問がある。回答結果とともに示すと・・・、
 質問「“コロナ”によっていろいろなことが変わりましたね。こどものことを決めるとき、おとなたちは こどもの気持ちや考えを、よく聞いていると思いますか?」
 回答(「あまりそう思わない」「全くそう思わない」の合計)
 ・・・6~8歳:15%、9~11歳:26%、12~14歳:42%、15~17歳:43%
 今年は、「コロナ対策」として、子どもに関わる様々な措置がなされた。最初の感染拡大期(3月)における全国一斉臨時休校。公園で遊ぶ子どもに対する大人からの苦言や、一部の施設は年齢制限を設け、子どもの利用を制限したところもあったという。オンライン学習が導入される中、家庭によるネット環境等の違いが教育格差をもたらす懸念も生まれた。学校行事は、中止や順延、分散型開催に。夏には、熱中症予防と感染防止の両立の観点から、子どものマスク着用の取り扱いの基準が設けられ、各学校で指導された。こうした措置や周囲の大人の声に、子ども自身はどう感じたのか。同調査の自由記述欄「おとなたちに言いたい・伝えたいこと」には、例えば次のような言葉が挙がる。
 ・「色んな大人たちへ。飲み屋さんとかで大人たちが騒いでいるのを見ると、わたしたちが普段学校とかでしている対策は何だろうなと思う。」(中学生)
 ・「子どもをバイ菌あつかいしないでほしい。」(中学生)
 ・「学校関係の対策をする場合、その地域の子どもたちに意見を聞いた方が良い。大人が言うことに全部従わないといけなくて窮屈。たとえ、それが私たち子どものためであっても、やり方を間違えていると思う。(小学高学年)
 「子どもの権利条約」には、自分のことなど、人に知られたくないときはそれを守られる権利(第16条)や、自分に関係のあることについて、自由に自分の意見を表し、その発達に応じて十分に考慮される権利(第12条)が謳われている。子ども/大人に関わらず、尊厳をもった個人に向き合う姿勢は変わらないでいたい。本条約が国連で採択された1989年11月20日、子ども扱いされることが嫌だった当時8歳の私にも優しく伝えてあげたい。
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【ふらっと便り】
 ◆ 12月 ふらっと 交流スペース展示のご案内 ◆
 『白兎養護学校 小・中学部 児童・生徒作品展』
   展示期間:12/1(火)~12/22(火)
 『拉致問題啓発 パネル展』 鳥取県総務部人権局
   展示期間:12/1(火)~12/24(木) 最終日の展示は午後3時まで
 ◆ 新入荷図書 ◆
 ○『新・ちいさいひと 青葉児童相談所物語 8巻』
   イラスト:夾竹桃 ジン 著:水野 光博
   著・企画・原案:小宮 純一/出版社:小学館
 ○『風太郎不戦日記 2巻』
   原著:山田 風太郎 著:勝田 文/出版社:講談社
 ○『コウノドリ 32巻』
   著:鈴ノ木 ユウ/出版社:講談社
 ○『ブクロキックス 1巻』
   著:松本 いっか/出版社:講談社
 ○『使い捨て外国人 人権なき移民国家、日本』
   著:指宿 昭一/出版社:朝陽会
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 【つれづれ日記】   メイプル
 大河ドラマ「麒麟がくる」を毎週楽しみにしている。その前半の第13話(4月12日)で印象に残るセリフがあった。明智光秀が仕えていた戦国武将・齋藤道三が息子に向かって放った言葉である。「言葉は刃物ぞ!気をつけて使え。」実の父ではないと疑っている息子が父・道三を「お前」呼ばわりした事に対する叱咤の言葉である。
 この言葉は、またどこかで使われるなと思ってドラマを見ていたところ、第32話(11月15日)で似たセリフがあった。浅井長政が寝返ったことを政所執事・摂津晴門が事前に知っていたことを光秀が問い質した言葉である。「敵の味方は敵と申しますぞ。お言葉にお気をつけなされ!」。いずれも脚本家の痛烈なメッセージであろう。
 折しも、新型コロナウイルス感染への不安から、他人への攻撃的な言葉がネット上を中心として見受けられるこの頃である。こんな時だからこそ、心に余裕を持ち、言葉を発する前に一呼吸置きたいものだ。

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