172号<令和3 年3月24日配信>

【巻頭文】
 COVID-19への対応に揺れた今年度、当センターは新たな事業にチャレンジした。啓発ポスターとリーフレット、そして啓発グッズの制作である。
 この一年は「3密」回避の必要からこれまでのような集合研修が難しくなったところが多く、当センターが受けていた講師派遣の依頼も中止や延期が相次ぎ、リモート研修や録画研修に変わった。また、研修の代わりに住民等に配布できる適当な啓発資料はないかという問合せや、当センターがこれまでに発行した人権学習資料や教材を「〇〇だより」などの発行物に掲載したいとの要望も多く寄せられた。
 痛感したのは、当センターが行っていた事業のほとんどは「集合研修」ありきのサービスであったということである。「集合研修」への講師派遣、「集合研修」で使われる教材づくり、「集合研修」企画者への参考情報の発信…。なぜこのような偏りができたのだろうか?
 みんなで人権問題について議論し学ぶ「集合研修」は、参加者の様子やアンケートから成果や課題を把握しやすい。これは啓発者からすると大きな魅力だ。一方、当センターは啓発パネルの制作・貸し出しも行ってきたが、パネルの発するメッセージは一方的で、一体どれだけの人が「パネルが目に映った」のではなくパネルのメッセージを受け止めたのか、どう感じたのかなど、成果を測ることが難しい。もしかして、成果の測定が難しいことと成果が小さいことを混同し、事業の優先順位を下げてはいなかったか?その結果、成果測定を可能にする方法やメッセージ効果を高める技術を磨いてこなかったのではないか?
 そこで、冒頭のチャレンジにつながる。「集合研修」一辺倒を見直し、研修にはやってこない人々、人権問題に特に関心のない人々に向けて、「つい立ち止まって見てしまうポスター」、「研修の代わりに啓発メッセージを届けられるリーフレット」、「普段使いすることでゆるやかなメッセージを発信できる啓発グッズ」をめざし、職員一同、頭を悩ませながら現時点でのベストと思えるものを制作した。また、来年度「ふらっと人権ライブラリー」では“お一人様用人権啓発DVD”の貸出を開始する予定だ。
 今後も多様な媒体を駆使し、社会がどのように変化しても人権尊重のメッセージを伝える工夫を続けていきたい。
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【ふらっと便り】
◆ 4月 ふらっと 交流スペース展示のご案内 ◆
 『世界自閉症啓発デーin鳥取 2021 With ふらっと』
  主催: 困り感を抱える子を支援する親の会 「らっきょうの花」
  展示期間:4/2(金)~4/14(水)(最終日の展示は午後3時まで)
◆新入荷DVD◆
『部落の心を伝えたいシリーズ 番外編 つなぐ×なくす ~岡本工介~』
  上映時間25分  2020年制作  ドキュメンタリー
『くぅとしの ―あなたがそばにいるだけでー』
  上映時間12分  2020年制作  アニメーション
『お互いを活かし合うための人権シリーズ③
  今そこにいる人と、しっかり出会う ―同和問題―』
  上映時間24分  2020年制作  ドラマ・解説
『お互いを活かし合うための人権シリーズ④
  「違い」を「力」にするために ―職場のコミュニケーションのヒント―』
  上映時間26分  2020年制作  ドラマ・解説
◆新入荷図書◆
『図解 新型コロナウイルス メンタルヘルス対策』
  著:亀田 高志/出版社:エクスナレッジ
『シニア六法』
  監修・著:住田 裕子/出版社:KADOKAWA
『ムーちゃんと手をつないで~自閉症の娘が教えてくれたこと~④』
  著:みなと 鈴/出版社:秋田書店
『声が出せない少女は「彼女が優しすぎる」と思っている②』
  著:矢村 いち/出版社:秋田書店
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 【つれづれ日記】   ハンドルネーム:ころすけ
 東京オリンピック・パラリンピックの開閉会式の演出を統括するクリエイティブ・ディレクターが、ある女性タレントの容姿を侮辱するような演出プランを提案していたことが明るみになった。東京五輪組織委員会前会長の女性蔑視発言に続き、正直、「また五輪関係者か」とうんざりした。
 誰かの容姿をからかったり侮辱したりする言動は巷に溢れている。からかいや侮辱の意図はないのかもしれないが、なんでわざわざそんな言い方をする必要があるんだろうと思うものもある。例えば、女性を褒めているつもりだろうと思われるもの。「若い!とても50代には見えない!」「お綺麗ですよね!お子様がいらっしゃるようには見えません!」「こう見えて二児の母!」。…「○○代女性」や「母」の容姿に基本形があるとでも?
 とは言え、自分にジェンダーバイアスやルッキズムの欠片もないのかと言われれば、そんなことはない。誰かを批判するだけでなく、自分を振り返ることも忘れないようにしよう。

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