171号<令和3 年2月25日配信>
【巻頭文】
5年振りに運転免許の更新に行ってきた。諸事情あって、今回はゴールド返上である。講習では、悲惨な交通事故の実例を聞かされ、身の引き締まる思いがした。交通事故には被害者と加害者があるわけだが、重大な事故は、どちらも一瞬で人生が台無しになる。日頃から、細心の注意を払って安全運転に努めなければならないということを再認識した日となった。
最近、逆走、ペダルの踏み間違いなど、高齢者による重大事故が大きく報道され、「高齢者の運転=危険」という構図がクローズアップされている。高齢者といっても、状況は人によって異なり、年齢だけで一概に線引きできるものではないのだが、高齢者というだけで、「危ないから免許を返納すべき」という風潮がある。
統計では、高齢ドライバー(65歳以上)の事故件数は、平成25年から7年連続で減少している。(警察庁交通総務課統計より)。しかし、他の年齢層の事故の減り方に比べ、高齢ドライバーの事故はあまり減っていない。つまり、全年齢層の事故に占める割合は増えているため注目されるのである。高齢ドライバーの事故があまり減らないのは、高齢者の運転のせいだけともいえないようだ。「事故が減らないのは免許を保有する高齢者が増えたから。昔に比べて事故を起こしやすくなったわけではない。」(実践女子大学松浦常夫教授著『高齢ドライバーの安全心理学』より)
最も事故を起こす割合が高いのは16~19歳(実際、この年代の任意保険の保険料は割高である)。次に高いのは20~24歳で、65~74歳はむしろ低い年代(警察庁「同統計」より)。75歳以上になると、特に死亡件数が増加するが、これも他者を死亡させた事故ばかりではなく、「高齢ゆえに、事故を起こした本人が死亡するケースが多く含まれているから」(松浦教授)だという。74歳までは下の年齢層と大きく変わらず、75歳以上になると、事故が増え、命も落としやすくなる、というのが、高齢ドライバー事故の実態のようだ。
事故時の違反に注目すると、高齢ドライバーは、若年層より一時不停止、信号無視、操作ミスの割合が多いという。まずはこうした違反を犯さないように注意することが、事故を起こす確率を減らすことにつながる。高齢者にとって、運転は単なる移動手段ではなく、社会とつながる手段でもある。安全に運転寿命を延ばすことは、豊かな人生を過ごすことにもなる。自動車の安全運転に関する技術が進化して、高齢者も安心して運転できる、そんな社会に早くなってほしいものである。
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【ふらっと便り】
◆ 3月 ふらっと 交流スペース展示のご案内 ◆
① 『え?に心当たりありませんか』
人権学習資料(ポスター)展 『テーマ : インターネットと人権』
鳥取県人権文化センター
展示期間:2/27(土)~3/31(水) 最終日の展示は午後3時まで
②『のりこえよう! ステイホームが引き寄せる
様々な依存症 わかっとるけどやられんだが~』
鳥取アディクション連絡会
展示期間:3/16(火)~3/31(水) 最終日の展示は午後3時まで
◆新入荷図書◆
『ヤンキー君と白杖ガール 5巻』
著:うおやま/出版社:KADOKAWA
『Shrink~精神科医ヨワイ~ 4巻』
著:月子 原著:七海 仁/出版社:集英社
『ゴールデンカムイ 24巻』
著:野田 サトル/出版社:集英社
『ALSを生きる―いつでも夢を追いかけていた』
著:谷川 彰英/出版社:東京書籍
『ケーキの切れない非行少年たち 1巻』
原著:宮口 幸治 イラスト:鈴木 マサカズ/出版社:新潮社【ふらっと便り】
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【つれづれ日記】 ハンドルネーム: 金ちゃん
先日、近所に暮らすお爺さんが亡くなった。90歳を過ぎても果樹園で仕事をしていた元気なお爺さんだった。生前には、私の方からお願いをして戦時中の体験を何度も聞いた。公民館や小学校で話をしてもらったこともある。
自分が志願兵として入隊するところから話は始まる。その口ぶりは徐々に熱を帯びていき、聴衆は皆、臨場感溢れる話に聞き入った。話はいよいよ佳境へと入り、「太平洋上のトラック諸島近海で、魚雷を受けて船が沈んでいく」場面へと移っていく。大音響とともに大海原に身を放り出される。息も絶え絶えに水面を漂い一度は死を覚悟した。力尽き天を仰いだその時、白い雲が目に映った。この雲が子どものころ見た遠いふるさとの雲と重なった。ふと我に返り、無我夢中でばたつかせた手の先に、たまたま流れ着いた板切れがあった、と。
私とお爺さんが最後に言葉を交わしたのは、昨年の盛夏、路上での立ち話だった。お爺さんは空を見上げなから冗談交じりに言い放った。「75年分、儲かったわいや。ハッハッハ!」
私は苦笑いしながら後ろ姿を見送るほかなかった。心よりご冥福をお祈りいたします。