173号<令和3 年4月28日配信>
【じんけん放話】
「●●の候~」。時候や時節を表す4月の慣用句には、「陽春(陽気のみちた温かい春)」「春暖(春の暖かさを感じること)」「春爛漫(春の花が咲き、光に満ちた様子)」等があり、どこか「うららかな光」の存在を感じます。
さて、私たちはそんな「光」と上手につき合えているのでしょうか。こと「人権問題」に関して。
「サーチライト理論」という考え方があります。人は世界の様々な事象をあるがまま受動的に見ているわけでなく、各々の問題意識や関心等がサーチライトの役割を果たし、それに照らされて浮かび上がった事象を認識していると捉える理論です。例えば、ハラスメント問題に関心のある人は、ハラスメントに関わる事象を認識できる一方、関心のない人にはそれが認識できない(見えない)のです。
そして、この理論を知った講演会で、講師から次のような指摘を受けました。「重要なのは、『何を知っているか』とともに『何を知らないか』に気づくこと。皆さんの『サーチライト』で照らされない『暗闇』の部分に、自分の認識を広げるカギがある」と。
この間、新型コロナウイルス感染症の感染者や医療従事者等に対する誹謗中傷や差別的な言動が、多くの人に問題だと認識され、差別解消を盛りこんだ条例づくりや民間の運動(シトラスリボンプロジェクト等)につながっています。
私は、今上げた問題をはじめ、人権問題として取り上げられることの比較的多い、子どもや女性、障がいのある人等を巡るコロナ下の状況を収集・整理してきましたが、あるときふと、「『サーチライト』に照らされない『暗闇』の部分に・・・」の言葉を思い出し、再度収集し直しました。すると、例えば次のような問題が起きていることに気づきました。
● コロナの影響で各国が人の移動に制限を受ける中、海上労働者(船員)が勤務交代できず海上に留まり続け、就業期間を超過して働き続けている。10月時点で、世界で40万以上が下船できていない見込み。国連、国際運輸連、国際民間航空機関、各企業等で対策を進めている。(2020年6、10、12月)
● 世界の42億人が安全な水や手洗いが可能な衛生施設(トイレ等)を使えない状況にあり、感染のまん延防止や健康や尊厳等に関わることを「世界トイレ・デー」に国連事務総長が指摘。(2020年11月)
● コロナ感染拡大時期に全国の長距離トラックドライバーが直面した事例
例)1月の緊急事態宣言発令に伴い、サービスエリア等の食堂が20時で閉まり、深夜に食事が取れない「食堂難民」となっている(深夜、コンビニは軽食しか残っていない)。(2021年1月)
上記の問題を「暗闇」にしていたのは、自分にとって身近でない分野を掘り下げることへの動機が弱かったから?当たり前に享受できている(トイレ)だからこそ、それが享受できない状況への想像力が足りなかったから?・・・。自戒しながら、問いを深め、自分とのつながりを見直していく中に、今後の人権啓発のヒントがあるように感じています。
あなたの「サーチライト」は、何をどこまで照らしていますか?
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【ふらっと便り】
● “ふらっと”移転準備のため、5月の展示はお休みいたします。
● 4月から新しく個人視聴用DVDを入荷いたしました。
◆ 新入荷DVD(個人視聴用)
・『Fukushima50-フクシマフィフティー』上映時間122分2020年制作 映画
・『彼らが本気で編むときは、』 上映時間127分 2017年制作 映画
・『インフルエンザ 5000万人の犠牲を経て(音声英語)』
上映時間50分 2020年制作 ドキュメンタリー 他7本
◆新入荷DVD
『カンパニュラの夢』上映時間36分 2020年製作 ドラマ
◆新入荷図書
・『戦後 夜間中学校の歴史』
著:大多和 雅絵/出版社:六花出版 株式会社
・『加害者家族バッシング 世間学から考える』
著:佐藤 直樹/出版社:現代書館
・『10代から知っておきたい あなたを閉じこめる「ずるい言葉」』
著:森山 至貴/出版社:WAVE出版
・『「逃げおくれた」伴走者 分断された社会で人とつながる』
著:奥田 知志/出版社:本の種出版
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【つれづれ日記】 ハンドルネーム:いるー
うちの娘、大学4年生。俗に言う就活(就職活動)生。
彼女は、「卒論に専念するので就活はしません!!」と宣言したものの、新卒での就活は今しか経験できないと気づき就活開始!
想像以上に時間をとられることにビックリ!自己分析や企業研究、エントリーシートから履歴書など。
自己分析に関しては、とても有意義な作業で自分の振り返りができ満足。
しかし、自由人の彼女にとって自分を企業という大きな組織に合わせることが難しく、ストレスを感じることもわかった。そんな自分が嫌いなのではなく、むしろ個性として受け入れている。
彼女は、そんな自分を受け入れてくれる働く場所を探しつつ、今しかできない卒論の道へと帰っていくことと思う。
母は、娘が決めた道を応援するのみだ。頑張れ娘!!