177号<令和3 年8月26日配信>

【じんけん放話】
 「もっと国がロックダウンでも何でもして、人流をガチッと押さえ込まなきゃダメなんじゃないですか」と、この前観たテレビ情報番組の出演者が言っていた。
 感染症が第5波に入った頃から政府の強権発動を望む声が増えてきたが、ロックダウンを行うということは自由な移動とそれに付随する様々な個人生活、つまり我々の人権を政府が制限するということを意味する。
 ロックダウンというとその有効性に議論が集中しがちだが、そもそも私たちはこの重大性をどこまで理解して議論できているだろうか?
 本来、人権はすべての人が持っている自然権であり、いかなる法律を作っても奪うことはできない。そんな人権の行使が唯一制限されるのは「公共の福祉」に反する場合である。日本国憲法には、国民は基本的人権を「公共の福祉のために」利用する責任を負う(12条) 、また、基本的人権は「公共の福祉に反しない限り」立法その他の国政のうえで最大の尊重を必要とする (13条)とある。
 ところで「公共の福祉」とは一体何なのだろう?分かるようで分からない、漠然とした概念であるが為に悪用されてきた歴史がある。あるときは国家利益に個人を従属させる全体主義の根拠として、またあるときは社会の少数者を切り捨て多数者の利益を優先する「数の論理」を正当化するために。
 増え続ける新型コロナウイルス感染者と医療崩壊を伝える情報を見聞きするたび、さらに踏み込んだ対策を急いで講じる必要があると私も強く思う。しかし、こんな時だからこそ私たちはしっかりと考えなければならない。「公共の福祉」とは少数者を含むすべての人々にとっての利益ということ。つまりは「公共の福祉」によって人権を制限される人にとっても利益とならなければ、それは「公共の福祉」とは呼べないのだ。
 多様性を尊重しつつ、「公共の福祉」をめざして共に生きる。時代のスローガンが試されている。
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【ふらっと便り】
◆ 9月 ふらっと 交流スペース展示のご案内 ◆
 『NPO法人十人十色アート展 SDGs魂 ~よみがえれ不要なものたち~』
  NPO法人十人十色 展示期間:9/1(水)~9/30(木)(最終日の展示は午後3時まで)
◆ 新入荷図書 ◆
『あるがままに自閉症です ~東田直樹の見つめる世界~』
  著:東田 直樹/出版社:エスコアール
『この地球(ほし)にすんでいる僕の仲間たちへ12歳の僕が知っている自閉症の世界』
  著:東田 直樹  著:東田 美紀/出版社:エスコアール
『希望の一滴 中村哲、アフガン最後の言葉』
  著:中村 哲/出版社:西日本新聞社
『パーフェクトワールド①』
  著:有賀 リエ/出版社:講談社
『令和3年版 人権教育・啓発白書』
  編:法務省・文部科学省/出版社:勝美印刷
『どうしても頑張れない人たち ケーキの切れない非行少年たち2』
  著:宮口 幸治/出版社:新潮社
『ヤンキー君と白杖ガール⑥』
  著:うおやま/出版社:KADOKAWA
『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―⑪』
  著:武田 一義  企画・原案:平塚 柾緒/出版社:白泉社
『風太郎不戦日記③』
  原著:山田 風太郎  著:勝田 文/出版社:講談社
『情報を正しく選択するための認知アドバイス事典』
 著:情報文化研究所  著:山崎 紗紀子  著:宮代 こずゑ
  著:菊池 由希子  監修:高橋 昌一郎/出版社:フォレスト出版
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【つれづれ日記】 ハンドルネーム:メイプル
 終息が見通せないコロナ禍で在宅中心の生活を余儀なくされ、「健康で文化的な生活を営む権利」が脅かされているのではないだろうか。こんな時こそ、有意義な時間を過ごすための工夫が必要だ。そこで、日頃から気になっていた物置の片づけに着手した。
 『人生がときめく片づけの魔法』の著者近藤某氏によると、片づけの極意とは、「手にとってみて、ときめかないものは捨てるべし」ということ。これにならい、片づけを始めたところ、何年も使っていないものに今更ときめくはずもなく、ほとんどのものは不要品として捨てることとなった。
 著者によれば、“片づけを早く終わらせて、きれいなところでときめく毎日を過ごす”ことが本意らしいのだが、本当に片づけでときめくようなことがあるのだろうか。と思いながら片づけをしていると意外なものを見つけた。
 出てきたのは、100均で仕入れていた大量のマスク。花粉症対策のため、ストックしていたことをすっかり忘れていたのだ。2年前は、30枚入りのマスク1箱が100円で販売されていたことに驚いた。ときめいたかどうかは別として、これは捨てられない。

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