178号<令和3 年9月22日配信>
【じんけん放話】
先週、厚生労働省は、過重労働が原因で脳や心臓の病気を発症した労働者が労働災害を申請した際の認定基準を20年ぶりに改正しました。既存の「過労死ライン(*1)」に加え、不規則な勤務形態(勤務間インターバルが11時間未満)も勘案されるようです。
労働災害は、業務中や通勤中、又は業務や通勤が原因で発生した負傷・疾病・障害・死亡を意味します。今日、労災、特に疾病に関わる労災を語る上で、パワーハラスメントの問題は欠かせません。
昨年、職場のパワハラ防止対策が法制化されたこと等を受け、「精神障害の労災認定基準」の項目にパワハラ(*2)が加えられました。すると、昨年度、仕事による強いストレスが原因でうつ病等の精神障がいを発症した人の内、労災認定された人が過去最多の608人。最も多い発生要因がパワハラ(99人)でした。ちなみに、パワハラに関する相談が多い職場には、過重労働の実態もうかがえます。
さて、10月1~7日は、厚生労働省と中央労働災害防止協会が提唱する「全国労働衛生週間」です。労働者の健康管理や職場環境の改善等、労働衛生に関する個々の意識を高め、職場の自主的な活動を促すことで、労働者の健康を守ることが目的です。
その実施要綱にパワハラに関わる記載はありませんが、労働者の心身の健康を害する要因にパワハラがある限り、労働衛生の問題として考えることも大切です。各組織のハラスメント防止対策が適切に機能しているか見直すきっかけにもなるでしょう。(*3)
同時に、ハラスメントの防止にあたり、上司や働く一人ひとりに、「他の労働者に対する言動に注意を払うよう努める」ことが、ハラスメント規制法等で求められています。
「パワハラなんてしない」と断言する方。思い込みや偏った見方で、他者の考えや感情を否定、軽んじることはありませんか。そのことが、パワハラ等のきっかけになり、また、問題解決の邪魔をすることもあります。
以下、「注意を払う」ための参考に、ご自身に問いかけてみましょう。
・「普通こうでしょ!」と、自分の考えは世間一般の合意を得ていると思い込んだ主張をし
がちでないか。
・「そんなことも知らないの、ちょっと引くわ(笑)」と、相手の「分からなさ」への配慮に
かけていないか。
・「私のミスじゃない、報告しなかった君のせいでしょ!」と、自分の責任を他者に押しつけ
ることはないか。
・「私の発言がAさんを傷つけたって?BさんやCさんはそう思ってないよ。考えすぎ(笑)」
と、自分にとって都合の良い話だけ取り入れ、異論を軽視していないか。
なお、今月は本週間の「準備期間」にあたります。個人、組織として意識に関わる準備も怠らないようにしたいですね。
*1:過労死ラインは、残業時間が発症前2~6ヶ月平均で月80時間、直近1ヶ月で100時間の状態。
*2:正式名は、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」。
*3: 厚生労働省は、毎月12月を「職場のハラスメント撲滅期間」と定めている。
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【ふらっと便り】
◆ 10月 ふらっと 交流スペース展示のご案内 ◆
『鳥取市から知る・取り組む「誰ひとり取り残さない」SDGsとJICA海外協力隊の活動』
鳥取県JICAディスク
展示期間:10/1(金)~10/31(日) 最終日の展示は午後3時まで
◆ 新入荷図書 ◆
・『ブクロキックス 5巻』 著:松木 いっか/出版社:講談社
・『県立!再チャレンジ高校 生徒が人生をやり直せる学校』
著:黒川 祥子/出版社:講談社
・『「いろんな人がいる」が当たり前の教室に』
著:原田 真知子 解説:上間 陽子/出版社:高文研
・『どの子も違う‐才能を伸ばす子育て 潰す子育て』著:中邑 賢龍/出版社:中央公論新社
・『子どもを守る言葉「同意」って何?YES、NOは自分が決める!』
著:レイチェル・ブライアン 翻訳:中井 はるの/出版社:集英社
・『子どもたちがつくる町―大阪・西成の子育て支援』著:村上 晴彦/出版社:世界思想社
・『ちょさく犬が答える!SNS時代の著作権』著:野田 佳那/出版社:三恵社
・『マンガでわかるLGBTQ+』著:パレットーク 著・イラスト:ケイカ/出版社:講談社
・『みんな自分らしくいるためのはじめてのLGBT』著:遠藤 まめた/出版社:筑摩書房
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【つれづれ日記】 ハンドルネーム:SHOHEI
91年、若さにまかせて、上海ローマ間シルクロード15,000㎞の横断に挑戦した。中国タクラマカン砂漠をラクダに跨り踏破、標高5,000mのフンジェラーブ峠を越え、ほっとしていたところでソ連邦が崩壊。その混乱の中、やっとの思いでパキスタン北部の町ペシャワールへと辿り着いた。
町外れには、以前から旱魃による食糧不足で避難していたアフガニスタン難民が暮らしていたが、さらに着の身着のままの避難者が押し寄せ、キャンプに収容仕切れなくなった人々が、公園や路上で急場をしのいでいた。
ペシャワールにしばらく滞在するうち一人の少年と仲良くなった。少年は実直で温厚、周囲の誰からも愛されており、厳しい環境にも関わらず、どこからか手に入れてきた衣類や食料を高齢者や障がいのある人に分け与えていた。
しかし、そんな人柄とは、かけ離れた激烈な言葉が、ときおり少年の口から飛び出すことがあった。「ソ連兵士もアメリカ野郎も糞食らえだ!」「僕たちの国は僕たちの手で作りあげるんだ!」当時、第一次タリバン政権が成立する5年前のこと。
あれからちょうど30年、あの少年は今どうしているだろうか? 自分の望んだ人生を歩んでいるだろうか? 母国アフガニスタンは、彼が思い描いた通りの国になっているだろうか?
今、マスコミ報道に触れる度、はにかむような少年の笑顔を思い出す。