182号<令和4年1月26日配信>
【じんけん放話】
「啓発者のための人権勉強会」は今年で3年めの事業だ。人権啓発を行うのにぜひ理解しておきたいマジョリティ特権やマイクロアグレッションなどの概念、スピーチやパワーポイントの技術などについて県内各地で講義と協議を行ってきた。目の前の業務に追われ、狭小かつ短期的(年度的?)思考に陥りがちな毎日だが、この勉強会は「人権啓発をより効果的に行うにはどうすればよいか」という根本的な問いを、しばし作業机を離れて少し遠いところから考えてみる機会を提供してきたと自負している。
そして今、勉強会を担当してきた私がこの問いに答えるとすれば、「魅力的なアライ像(モアイ像ではない)を発信する」ことを挙げるだろう。アライとは、自らは社会的マジョリティであり、マジョリティの立場や力を使いながらマイノリティと連携して差別や抑圧の解消に取り組む人のことを指す言葉である。
これまでの人権啓発では被差別マイノリティが自らの体験や思いを語ることが多かったが、今後はマジョリティ側にいるアライの体験や思いを語る場をより積極的に作っていきたい。なぜなら、社会的マジョリティにとってマイノリティの話はどうしても他人事となりやすいが、アライが差別に向き合った自分の体験を語り、自分の意識を分析し、葛藤を打ち明け、自分の身に起こった変化や成長を紹介すれば、マジョリティも自分事として興味を持って受け止めやすいのではないかと期待するからである。
ただし、これにはいくつかの条件がある。
・アライの話は立派な人の偉業ではなく、フツーの人による日常と地続きの話であること。
・被差別マイノリティの代弁ではなく、あくまでマジョリティが主人公の話であること。
・マジョリティ性をあまり責めないこと。マジョリティだからこその成長と可能性を
語ること。
・聞いた人が自分にもできそうだと思うような具体的な行動を提案すること。
・提案される行動はかっこよく、ワクワクするものであること。それをするとより良い
未来が開けると予感させること。
どのような啓発事業を仕掛けていくかは今後の課題。一緒に考え、議論してくれる人は大歓迎である。
=======================================
【ふらっと便り】
◆2月 ふらっと 交流スペース展示のご案内◆
『社会福祉法人 もみの木福祉会 作品展』
社会福祉法人もみの木福祉会 展示期間:2/1(火)~2/28(月)最終日の展示は午後3時まで
◆新入荷DVD◆
『バレンタイン一揆』 ※個人視聴用 上映時間64分 2012年制作
ドキュメンタリー『夕焼け』 上映時間35分 2021年制作 ドラマ・解説
◆新入荷図書◆
『新・ちいさいひと 青葉児童相談所物語 10巻』
イラスト:夾竹桃 ジン著:水野 光博 企画・原案:小宮 純一/出版社:小学館
『声がだせない少女は「彼女が優しすぎる」と思っている 6巻』
著:矢村 いち/出版社:秋田書店
『感染病と人権 コロナ・ハンセン病問題から考える法の役割』
著:内田 博文/出版社:解放出版社
『マンガ ペストとコロナ 東京の女子高生が、ペストの世界に迷いこんだら』
著:カミュ 監修:長尾 和宏 イラスト:陽藤 凛吾/出版社:ブックマン社
『中絶がわかる本 My Body My Choice』
著:ロビン・スティーブンソン 翻訳:塚原 久美/出版社:アジュマ
『エリックの赤・緑』
著:ジュリー・アンダーソン 著:デヴィッド・ロペス
翻訳:ごとう あさほ 翻訳・解説:尾家 宏昭/出版社:学術研究出版
『あいつゲイだって アウティングはなぜ問題なのか?』
著:松岡 宗嗣/出版社:柏書房
========================================
【つれづれ日記】 ハンドルネーム: SHOHEI
今冬は雪が多い。山間部に暮らす私の家や道路の脇には、今も雪が堆く積まれている。昨年末から、何度、雪かきをしたことか! かいてもかいてもキリがない。溜息をついてスコップを投げ出し、除雪を諦めた高齢者も多い。
先日、二日間も降り続く雪と悪戦苦闘していると、背後から「手伝います!」と声をかけられた。山間地域のまちづくりに興味を抱き、近所に住み込んでいる大学生とその仲間たちだった。聞いてみると、この日、数人の大学生が手分けをして、町のあちこちで雪かきをしているという。彼らとは、以前から何度かまちづくりのことで話合いをしたことがあるが、その時は、「町に人を呼び込みたい。」「イベントをしたい。」「何か特産品を作りたい」という思いが強かったように思う。
雪かきを終えて戻ってきた大学生たちに感想を聞いてみた。「喜んでもらったのがうれしかった。」「一人暮らしのおばあちゃんの家で一緒にごはんを食べた。」「名前を覚えてもらった。」「笑顔で、また来てな! と、言ってもらった。」大学生たちは紅潮した顔でそれぞれの体験を活き活きと語り始めた。この日、高齢者の多い山間の町には笑顔があふれたに違いない。
夜遅くまで話し込んでいた大学生たち、また違った形での「まちづくり」を思い描き始めたようだ。