183号<令和4年2月26日配信>
【じんけん放話】
先日、地元小学校の学校評議員会で「ヤングケアラー」の話が出ました。近年、マスコミ報道等でも目にする機会が増えましたが、家庭内ケアの担い手として、親や祖父母の介護や兄弟姉妹の世話を日常的にしなければならない子どもたちや若者を指す言葉です。ヤングケアラーと一口に言っても、ケアの対象者、その期間、負担の程度、年齢など、状況によってその意識や抱えている問題の大きさは一人ひとり異なります。
ヤングケアラーの子どもたちは、大人が担うような家事や家族の世話などを日常的に行うことから「勉強をする時間がない」「友だちと遊べない」「課外活動やスポーツクラブなどに通えない」また、中には、「学校に行けない」など、本来、子どもたちが成長していく過程で必要とする勉強や遊び、様々な活動が制限されてしまうことも少なくありません。そればかりか、不安にさいなまれたり、睡眠不足であったりと心身の健康にも影響を与える場合もあります。さきほどの校長先生も「実態はあまり把握できていない」とのことでしたが、ヤングケアラーの問題は、家庭内のことでもあり表に出ず、学校や自治体での現状把握は十分に進んでいるとは言えません。
介護保険制度等の活用により介護の社会化が進む一方で、家族内での介護や世話等を担う力は少しずつ低下しているのではないでしょうか。祖父母等の長寿化や経済的な問題、核家族化や一人親世帯の増加、親族や近隣住民との繋がりの希薄化等、家族を取り巻く社会状況は変化しています。これらも要因となり、祖父母の介護を担ったり、幼い兄弟姉妹の幼稚(保育)園への送迎や世話等を日課としたりするヤングケアラーの問題が浮かび上がってきました。親自体がケアの対象であると、子どもの貧困問題とも重なってくるでしょう。
「ヤングケアラーの実態に関する全国調査研究[中2、全日制高2対象] 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(令和3年3月)」によると、中学2年生のケアラーは5.7%、全日制高2年生ケアラーは4.1%となっています。また、誰をケアしているかについては、中学2年生では「きょうだい」が61.8%、「父母」が23.5%、「祖父母」が14.7%となっています。全日制高校の2年生では、「きょうだい」が44.3%、「父母」が29.6%、祖父母が22.5%となっており、学年が上がるにつれ、親、祖父母の介護を担うヤングケアラーが増えてくるようです。
鳥取県でも、介護支援専門員や学校関係者、児童相談所などからなるヤングケアラーの対策会議が開かれており、相談窓口も設けらています。
子どもの権利条約では、「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」が示され、その31条には、「子どもには、休息・遊び・文化的活動を行う権利がある」とされています。学校や行政、また、地域が協力しながら、ヤングケアラーたちの現状を把握するとともに、その人権を保障していかなければなりません。
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【ふらっと便り】
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鳥取県人権文化センター 展示期間:3月1日(火)~3月13日(日)
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わかっとるけどやめられんだが~』
鳥取アディクション連絡会 展示期間:3月15日(火)~3月31日(木)(最終日の展示は15時まで)
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原著:竹村 優作 著:ヨンチャン/出版社:講談社
『パーフェクトワールド 6巻』
著:有賀 リエ/出版社:講談社
『ゴールデンカムイ 28巻』
著:野田 サトル/出版社:集英社
『夜廻り猫 3巻』
著:深谷 かほる/出版社:講談社
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【つれづれ日記】ハンドルネーム:メイプル
北京オリンピックのマスコットキャラクターがパンダだったのは記憶に新しいが、『パンダが食べている笹の葉は、ほとんど栄養がない』という。では、なぜ笹を食べているのか、その理由は大昔に生存競争に敗れたから。パンダは熊の仲間だが、他の熊に住む場所を追われて、笹しか生えない高い山で暮らすことになり、仕方なく、消化の悪い笹を食べているらしい。児童書としては大ヒットしている「ざんねんないきもの事典」は、動物学者・今泉忠明氏が監修し、パンダをはじめ動物のちょっと間抜けな弱点をイラスト入りで取り上げている。
本には取り上げられていないが、今泉氏によると、人間は体が原始的なまま急に脳が発達したから、いろいろ置きざりになっているという。だから腰が痛いとか、足が浮腫(むく)むとか、肩が凝るとか、定期的に髪を切らなければならないとか、残念なポイントが多い。他にも人は歩く時に踵(かかと)をつけて歩くが、これはとても原始的だそうだ。進化するとより早く移動するためにつま先で歩くようになるから。このようにフィジカルが残念な上に、差別・偏見・虐待などの人権課題も抱えている人間って、本当は一番「ざんねんないきもの」なのかもしれない。