184号<令和4年3月23日配信>
【じんけん放話】
この1ヶ月、折に触れて「人権啓発の役割」について考えています。そんなとき思い浮かぶのが、以前、職場の会議で同僚が語った次のような言葉です。
「社会で起きている事柄に何らかの意見を表明するとき、経済や(国の)予算、習慣、伝統、文化、宗教、自然環境、社会・政治情勢など、諸々の視点を考慮することも大切。でも自分たちの仕事は、人権や人権尊重の大切さを伝えたり、人権の視点から問題点を指摘したり、解決策を考えることを促したりしていくこと。社会がおかしな方向にいきそうなとき、『ちょっと待って』『それはおかしい』『この点を考えてみないと』と警鐘を鳴らして、人権尊重の方向にも意識を向けてもらう。少数でも、人権尊重の立場に立ちきって、しつこく、粘り強く伝え続ける存在がいることは必要で、それが自分たちの役割だと思う。」
この1ヶ月、ニュースを見聞きする度、心が揺さぶられ、悲しみ、憤りを感じます。また、ある出来事について語られるとき、語る人の依って立つ主義や立場の違いからここまで相反する主張がなされるのかと戸惑うこともあります。ただ、先に紹介した言葉を思い返す度、モヤモヤが晴れるような背筋がピンとするような気持ちになり、人権や人権啓発の輪郭をなぞるように、自分の立ち位置を再確認する次第です。
今年度も残りわずかですが、物事は日にちで区切られるばかりではありません。次年度からと言わず、明日から、否、今日から、より人権の視点にこだわって、責任と矜持をもって人権啓発に携わっていきたいと思います。
皆さんと今確認したい人権の一部を紹介して終わります。
世界人権宣言 (1948年 国連総会で採択)
●すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。
人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければなら
ない。(第1条)
●すべて人は、生命、自由及び身体の安全に対する権利を有する。(第3条)
●すべて人は、意見及び表現の自由に対する権利を有する。この権利は、干渉を受けること
なく自己の意見をもつ自由並びにあらゆる手段により、また、 国境を越えると否とに
かかわりなく、情報及び思想を求め、受け、及び伝える自由を含む。(第19条)
●すべて人は、衣食住、医療及び必要な社会的施設等により、自己及び家族の健康及び福祉に
十分な生活水準を保持する権利並びに失業、疾病、心身障害、配偶者の死亡、老齢その他
不可抗力による生活不能の場合は、保障を受ける権利を有する。(第25条-1)
●母と子とは、特別の保護及び援助を受ける権利を有する。すべての児童は、嫡出であると否
とを問わず、同じ社会的保護を受ける。(第25条-2)
●すべて人は、この宣言に掲げる権利及び自由が完全に実現される社会的及び国際的秩序に
対する権利を有する。(第28条)
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【ふらっと便り】
◆ 4月 ふらっと 交流スペース展示のご案内 ◆
『世界自閉症啓発デーin鳥取 2022 with ふらっと』
困り感を抱える子を支援する親の会「らっきょうの花」
展示期間:4/2(土)~4/15(金) (最終日の展示は午後3時まで)
◆ 新入荷DVD ◆
『一人になる 医師 小笠原登とハンセン病強制隔離政策』
上映時間99分 2021年制作 ドキュメンタリー
◆ 新入荷図書 ◆
『ケーキの切れない非行少年たち ④』
原著:宮口 幸治 著:鈴木 マサカズ/出版社:新潮社
『パーフェクトワールド ⑦』
著:有賀 リエ/出版社:講談社
『健康で文化的な最低限度の生活 ⑪』
著:柏木ハルコ/出版社:小学館
『夜廻り猫 ④』
著:月本 千景/出版社:講談社
『37.5℃の涙 ?』
著:椎名 チカ/出版社:小学館
『児童養護施設で暮らすということ 子どもたちと紡ぐ物語』
著:楢原 真也/出版社:日本評論社
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【つれづれ日記】ハンドルネーム: かとーちゃん
北京オリンピックで、フィギュアスケートの羽生結弦選手が4回転アクセルの挑戦について答えたときのこと。「僕の心の中に9歳の自分がいて…一緒に跳んだ…。」という発言が印象的だった。
心理療法の一つに『インナーチャイルドセラピー』という療法がある。インナーチャイルド(内なる子)とは誰の中にもいる自己の中核のことで、大人になっても変わらないまま続いている子ども時代の思考パターンや習慣を指している。生きづらさを抱えるアダルトチルドレンの回復に用いられる療法だが、自分の中のアダルトの部分とチャイルドの部分がちゃんと繋がり、安心感を得ながら活き活きと自分を発揮して生きることができるようになることを目指すとされている。
自分を信じ、活き活きと自分の能力や魅力を発揮して挑戦し続ける羽生選手は、自身のチャイルドとの強い繋がりを感じて一緒に歩んできたんだなぁと思わせる発言だった。
同じことがサッカーの本田圭佑選手の「リトルホンダ」にも言えると思うが、世界で活躍する選手は、自然と自身のチャイルドと対話をしていることに感動した。