187号<令和4年6月22日配信>

【じんけん放話】
 今秋開催の「日本女性会議2022 in鳥取くらよし」において、ある分科会の司会をすることになった。テーマが「女性の活躍」だと聞き、すぐさま「ジェンダーギャップ指数120位」という日本の不名誉な数字を思い浮かべた。世界経済フォーラムが毎年発表しているこの指数によると、日本の男女平等は世界156ヵ国のうち120位。先進7ヵ国のなかでダントツの低位である。これは政治や経済などあらゆる分野で女性リーダーが圧倒的に足りていないことに原因がある。
 そこで、分科会事務局は議会や自治会、企業、学生、農業経営の分野で活躍している県内の女性リーダーを探しだし、登壇をお願いした。うち2人は夫婦そろっての参加である。これら登壇者から女性リーダー誕生の経緯や苦労話をお聞きし、女性リーダーを増やすためのヒントを探ろうと考えたわけだ。
 ところが、登壇者との初顔合わせの場で、私が分科会のコンセプトをはりきって説明したところ、「自分をリーダーだと思ったことがない」「周囲の人の後押しや協力があったので、今の役割を果たしているだけ」といった、想定外の発言が次々と返ってきた。従来は男性の仕事・役割だと考えられてきた場所で、権限と責任を負って活躍しているれっきとしたリーダーたちであるにもかかわらず、彼女らの意識には、私が勝手に想像していたリーダーとしての気負いや重々しさのようなものが見当たらないのだ。
 当てが外れて混乱しつつも、改めて考えてみた。もしかしたら今後の女性リーダーは、男女平等の志や使命感などからではなく、彼女らのように「目の前に解決したい問題があったから」「周囲に頼まれたから」「チャンスが来たからつかんだ」といったふうに、もっと軽やかに、日常的な選択と決断の延長上に生まれるのかもしれない。だとすると、誰の日常にも、気づけば女性リーダーへの緩やかな道が伸びているのではないか?
 そう思ったら、以前にも増してこの分科会で登壇者のお話を聞くのが楽しみになってきた。彼女らのどんな日常が彼女らを今の活躍に導いたのか、ぜひ知りたい。分科会には、国際会議に出席して見識を深めつつ将来を模索している魅力的な学生も登壇する。日本女性会議は10月28日から30日までの3日間。興味のある方はご参加いただきたい。
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【ふらっと便り】
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  『社会福祉法人 もみの木福祉会 作品展』  展示期間:7/1(金)~7/30(土)
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   江嶋修作 川口泰司 坂田かおり・愛梨・瑠梨』 上巻・下巻
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   編集:『世界』編集部/出版社:岩波書店
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    著:柴田 昌平/イラスト:阿部 結/出版社:ポプラ社
 ・『これならわかる 戦争の歴史Q&A』
    著:石出 法太・石出 みどり/出版社:大月書店
 ・『「子供を殺してください」という親たち 11巻』
    原著:押川 剛/著:鈴木 マサカズ/出版社:新潮社
 ・『Shrink~精神科医ヨワイ~ 8巻』 原著:七海 仁/著:月子/出版社:集英社
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【つれづれ日記】 ハンドルネーム: まるすけ
 車輪がついた2本のスティック「さんぽセル」が話題だ。これをランドセルに取り付けるとキャリーバッグのように引いて運べ、運搬に必要な力を9割程度軽減できるという。「ランドセルが重い問題」を解決しようと、小学生が発案し、大学生が開発に携わり、地元企業が協力して製品化に至った。
 現在4ヶ月待ちのこの人気商品にネットでは大人の批判コメントが相次いだ。道路事情や防犯の観点からもランドセルは背負うべきとか、楽したら筋力が低下する等、「子どもはわかってない」、もっと言えば「子どもは黙っておけ」というもの。対する子どもたちは切れ味鋭い「反論」を発表。自らの意見を堂々と表明した。
 6月15日に国会で成立した「こども基本法」には、子どもの意見表明や社会参画の機会が確保されること、子どもの意見が尊重され最善の利益が考慮されることといった基本理念が明記されている。さんぽセルはその基本理念を見事に体現してみせた証であると同時に、大人が持つ「子ども観」や、子どもの人権保障にどう取り組むのか等、社会全体に問題を提起したと思う。この社会でともに生きる大人として、しっかり受け止め考えたい。

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