190号<令和4年9月28日配信>

【じんけん放話】
私たちが暮らすこの日本は、本当に平和な国だろうか?
 今年8月15日に行われた「令和4年度全国戦没者追悼式」の式辞で、岸田総理大臣は次のように述べた。
『戦後、我が国は、一貫して平和国家として、その歩みを進めてまいりました。歴史の教訓を深く胸に刻み、世界の平和と繁栄に力を尽くしてまいりました。』
 『未だ争いが絶えることのない世界にあって、我が国は、積極的平和主義の旗の下、国際社会と力を合わせながら、世界が直面する様々な課題の解決に、全力で取り組んでまいります。』
 積極的平和主義。遡ること2015年、戦後70年の節目を迎えたこの年、当時の安倍政権で外務大臣を務めていた岸田総理は、3月17日の参議院予算委員会において「積極的平和主義の定義」についてこう発言している。
 『今やテロ、サイバー、宇宙など、脅威が容易に国境を越える時代となりました。もはや一国のみでは自らの平和や安定を守ることはできません。自国の平和と安全を守るためには地域や国際社会の平和や安定を確保しなければならない、こういった考えに基づいて積極的に貢献していく、こうした取組を積極的平和主義と呼んでおります。』
政府が日本の安全保障の基本理念として掲げる「積極的平和主義(Proactive Contribution to Peace)」。これは、平和学の第一人者であるノルウェーのヨハン・ガルトゥング博士が提唱する「積極的平和(Positive Peace)」とは異なる。博士は、平和を「暴力の不在」と定義し、戦争や紛争などの「直接的暴力」がない状態を「消極的平和」、さらに格差や貧困、抑圧、差別、人権侵害を生み出す「構造的暴力」がない状態を「積極的平和」とした。
 ここで冒頭の問いに戻る。日本は、本当に平和な国だろうか?ガルトゥング博士の提唱する「平和」を基に考えれば、「そうだ」とは言えない。
 在日コリアンに対するヘイトスピーチやヘイトクライム、技能実習生への差別や人権侵害、入管施設における暴力や人権侵害、難民の受け入れ状況等、他国を武力攻撃していなくても、日本で暮らす、日本で生きようとする外国人や外国にルーツをもつ人への様々な暴力や差別が存在している。他の人権問題でも…と挙げ出せばきりがない。
 ロシアによるウクライナ侵攻が始まってからおよそ7ヶ月。日本で暮らす多くの人が一刻も早く平和が訪れることを願ってきたと思う。だからこそ、改めて考えませんか?平和とは何か、平和を創るにはどうしたらいいか、を。
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【ふらっと便り】
◆ 10月 ふらっと 交流スペース展示のご案内 ◆
『共につくる私たちの未来?SDGsから「持続可能な社会の創り手」への一歩を―』
 出典:JICA地球ひろば 展示期間:10/1(土)~10/31(月)(最終日の展示は午後3時まで)
◆ 新入荷DVD ◆
『自分ごとSDGs』上映時間:約22分 2022年製作 解説・インタビュー 対象:中学校
◆ 新入荷図書 ◆
『部落の私たちがリモートで好き勝手にしゃべってみた』
 編:部落解放・人権研究所 著:上川多実、武田緑、藤本真帆、三木幸美、本江優子/
  出版社:解放出版社
『コウノドリ 新型コロナウィルス編』
  著:鈴ノ木ユウ/出版社:講談社
『しょせん他人事ですから~とある弁護士の本音の仕事~ 1巻』
 企画・原案:佐藤真通 著:富士屋カツヒト/出版社:白泉社
『夜廻り猫 8巻』 著:深谷かほる/出版社:講談社
『大人も知らない!?SDGsなぜなにクイズ図鑑』 監修:笹谷秀光/出版社:宝島社
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【つれづれ日記】ハンドルネーム:  かとーちゃん
 この夏、高校の友人と6年ぶりに会う機会があった。
 一通り近況報告が終わり昔話に花を咲かせていると、私が人権に関わる仕事に携わっていることを知ってか、一人の友人が「“女性が活躍する社会”とか“女性が輝く社会”とか言われると、働いてない自分は引け目を感じる」と言ってきた。聞くと、出産を機に退職して以来仕事には就いていないそうだ。
 そう言われた私は、思わず「それなっ!」と共感してしまった。と言うのも、私も『これまで女性が輝いてなかったみたいに聞こえる…』と、違和感があったからだ。
 「仕事をすることだけが活躍や輝きってわけじゃないから、自分で決めた生き方でいいんじゃない?」とその場は流したが、より良い社会のための取り組みであっても負担に感じる人はいるということを、覚えておこうと思った。
 ちなみにその友人はママさんバレーをしており、以前見た試合で豪快にスパイクを決めてチームを引っぱる姿は、とても輝いて見えた。

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