193号<令和4年12月28日配信>

【じんけん放話】
 「正論過ぎると逆に残酷だね」。
 以前、知人から言われた言葉です。その知人は私に仕事や職場のことで相談をしてくれたのですが、私は自分の思う仕事や職場のあり方を説きながら、時に知人の言動を戒めてもいました。しかし知人が私に望んでいたのは、「あるべき論」を並べ立てることでなく、まずは自分が置かれる状況への「共感」の言葉と態度だったのです。冒頭の言葉には、そんな思いが込められていたと振り返ります。
 職場でも同じことが言えそうです。仕事柄、人権研修等で「職場のハラスメント」についてお話をする機会がありますが、参加者の中には、ハラスメントとは言えないまでも、「ハラスメントの種」になるような行為に関心をもつ方がいます。それは、今日のハラスメント規制法の対象となるハラスメント(例:パワーハラスメント)とは言い難いが、放っておくと労働者や職場に悪影響を与える行為のことです。
 近年メディアで取り上げられる「ロジカルハラスメント(ロジハラ)」も、「ハラスメントの種」と言えるかもしれません。ロジハラは、論理(正論)を過剰に押しつけて相手を不快にさせる行為です。法制度上、明確な位置づけはありませんが、一説にはパワハラの一種に該当するとの指摘もあります。
 論理的であることが悪いわけではなく、実際、何らかのミスや不備に対し、論理的に問題点と解決策を示すことは、組織の運営上欠かせません。ただ、相手の置かれた状況等を考慮しないまま一方的に指摘や否定することは、それが「正論」だとしても、相手を精神的に追い詰め、過剰な負担を強いる場合があります。そもそも、相手の状況等を理解しないまま、真に適切な状況判断や指摘はできないでしょう。「相手が間違っている」ことを前提にやりとりすると、相手の考えを否定する気持ちが生まれやすいこと。感情的になると相手を言い負かすことが目的となり、必要以上に相手の言動を非難してしまうこと。そうした意識に注意しつつ、やはり職場でも、「正論(論理)」の前に、できる限り共感的な理解を示して相手と向き合うことが大切です。
 今年も残り僅かですが、12月は、厚生労働省の定める「職場のハラスメント撲滅月間」でした。「撲滅」には、「完全にうちほろぼすこと。根こそぎなくしてしまうこと。(デジタル大辞泉:小学館)」という意味もあることから、問題の俎上に上がりにくい、無数の「ハラスメントの種」にあたる行為に注目してみるのも方法です。
 そこまで追究することを、「やり過ぎだ」と捉えるか「大切だ」と捉えるかは、各々の立場や価値観によって異なるでしょう。ただ、その追究が、誰もが物理的にも心理的にも安全に安心して働くことができる、その人の持ち味や能力を伸ばし発揮できる、そんな職場の実現に向けて必要な営みだとしたら・・・。
 この場合も、「正論すぎると残酷」でしょうか?
 参考:CBASE HP内コラム記事「ロジハラとは?問題点や対応方法について解説します」
   2022.9.14掲載
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【つれづれ日記】ハンドルネーム: スノーマン
 先週末、私が暮らす鳥取県の山間部は雪に見舞われました。思ったほどではなかったもののそれでも玄関先や人通りの少ない道には雪が積もりました。
 朝早くから遠くで若者の声が聞こえてきます。山間にある私の町の住民はほとんどが高齢者、快活な声が町に響くのは極めて珍しいことです。
 通りに出てみると、粉雪が舞う中、数人の大学生たちが雪かきをしていました。まちづくりに参画するため、町で暮らしている大学生とその仲間たちです。これまで、様々なまちづくりイベントを仕掛け、それなりの成果を上げてはきましたが、どうしても一過性のものになってしまうことが、彼/彼女等としては気がかりだったようです。試行錯誤した結果、《雪かきします! 宣言》、今冬は、大雪情報の前日には、大学生たちが仲間を引き連れて町に泊まってくれるようです。「いや~、これは頼もしい!」
 まちづくりにもいろいろあります。一住民として町に暮らすことで初めて気づくこともあるでしょう。そこに暮らす人々にとって必要とするものは何なのかを。

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