194号<令和5年1月24日配信>
【じんけん放話】
日本では、子どもに対して「まだ一人前ではないから」「大人が面倒を見る必要があるから」等の理由で、大人の指示命令に従うべき存在として捉えている人は少なくないでしょう。子どもが守られるべき存在であるのは言うまでもありませんが、守られる代償として、黙って大人の言うことに従わなければならないと考えるならば、それは子どもの人権を無視していることになります。子どもであっても当然一人の人間であり、権利の主体者として自分自身の意見や考えを述べることはできます。
とは言え、子ども自身が意見表明するに当たっては、さまざまな状況や障壁が存在します。特に小さな子どもにとって、自分の思いを適切に言語化し周囲に訴えることはそう簡単ではありません。時として、大きなストレスや不安を感じることもあるでしょう。
そこで今、アドボカシー制度が注目されています。アドボカシーとは、「当事者に寄り添いその声を聴き、当事者のパートナーとなって、その声を施策の意思決定者に伝え、よりよい方向へと導いていくこと」です。今日、障がいのある人や外国人等、特に社会的に弱い立場にあるマイノリティの権利擁護等の場面でアドボカシー制度は取り入れられています。そして、このアドボカシーを進める人のことを「アドボケイト」または、「アドボキット」と呼んでいます。
令和4年6月、児童福祉法を一部改正することが決まりました(令和6年4月施行)。この改正内容の1つに児童相談所等の「児童の意見聴取等の仕組みの整備」というものがあり、内容は以下のとおりです。
「児童相談所等は入所措置や一時保護等の際に児童の最善の利益を考慮しつつ、児童の意見・意向を勘案して措置を行うため、児童の意見聴取等の措置を講ずることとする。都道府県は児童の意見・意向表明や権利擁護に向けた必要な環境整備を行う。(児童福祉法等の一部を改正する法律の概要/厚生労働省)」
児童相談所等に保護される子どもたちの中には、自信がなかったり、無力感や不安に襲われていたり、自身の置かれた厳しい環境の中で声を出すことに臆病になっていたりする子どもたちも少なくありません。
今、鳥取県では、児童相談所の一時保護所や児童養護施設等で暮らす子どもたちの思いに寄り添い、その生活実体の改善等が行えるよう、「鳥取県版子どもアドボカシー」の制度が整えられつつあります。そこでは、子どもたちの人権や意見表明権等を大切にしようとする大人や、過去に施設等で暮らした経験のある若者たちが集い、試行錯誤を繰り返しながら奮闘を続けています。
児童相談所の一時保護所において、子どもたちに寄り添いパートナーとなって、その声を広げていく「子どもアドボキット」の養成も始まっており、来年度からは少しずつ実践を重ね「鳥取県版子どもアドボカシー」の取り組みが具体的に動き始めます。
=======================================
【ふらっと便り】
◆2月 ふらっと交流スペース展示のご案内◆
『鳥取県から世界へ~多文化共生、異文化理解への取り組み~』
鳥取県JICAデスク / 展示期間:2/1(水)~2/28(火) / 最終日の展示は午後3時まで
◆新入荷DVD◆
『アンコンシャス・バイアスをなくそう』 上映時間33分 2022年制作 概説
『家庭からふりかえる人権 話せてよかった』 上映時間27分 2020年制作 ドラマ
◆新入荷図書◆
『マンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち② 困っている子を見逃すな』
著:宮口 幸治 作画:佐々木 昭后/出版:扶桑社
『認知症介護の悩み引き出し52 「家族の会」の“つどい”は知恵の宝庫』
著・編:公益社団法人認知症の人と家族の会/出版社:クリエイツかもがわ
『僕の妻は発達障害 5巻』
著:ナナト エリ 著:亀山 聡/出版社:新潮社
『ドキュメント小説 ケーキの切れない非行少年たちのカルテ』
著:宮口 幸治/出版社:新潮社
『夜廻り猫 9巻』
著:深谷 かほる/出版社:講談社
========================================
【つれづれ日記】ハンドルネーム: グラデーション
最近、ある子どもたち(5、6歳児)と大人のやりとりを聞きました。
子どもA:「(近くの大人に向かって、)おれ、イカの塩辛食べれるで。」
大人「え~すごい。そんなの食べられるんだ。」
子どもA:「コーヒーも飲めるで。」
大人:「コーヒー牛乳?」
子どもA「違うで、コーヒーだし。炭酸も飲めるし。」
大人「私は、『(炭酸は)シュワシュワ』するけん好きじゃない。でも、オレンジジュースは飲めるよ。」
子どもA:「そんな子どもっぽいの好きだか?」
子どもB「ぼく、オレンジジュースが好き!」
子どもC、D、E・・・「私もジュース大好き」「ぼくも」等々。
子どもA「(大人に向かってヒソヒソ)おれもオレンジジュース好き。」
「大人」が好きだと思っているものを好きだと言ってみたり、「子どもっぽい」と一蹴するものも実は好きだと伝えてみたり・・・。そんな繊細で素直な子どもたちの様子に素敵だなと感じました。「素敵だな」と感じ取れる感覚を大切にしたいと思う年始めのこの頃です。