199号<令和6月28日配信>
【じんけん放話】 《 誰もが「権利の主体者」である! 》
先日、公民館主催の高齢者学級で「高齢者の人権」について講演を行いました。「高齢者に関わる人権問題を包括的にお話してほしい」との依頼です。
まずは超高齢社会の現実をグラフで示します。日本は高齢化率(人口に占める65歳以上の人の割合)が30%に迫っており、世界でも類を見ない超高齢社会であること、2025年には団塊の世代全員が75歳を迎え医療や介護の面で財政が逼迫し、かつ介護の担い手不足が深刻なこと、高齢者夫婦のみの家庭や一人暮らしが増えていることなど、日本の厳しい現状を目の当たりにして、会場からはため息が漏れ聞こえます。
次に、「高齢者虐待」「貧困の問題」「孤独」「認知症への偏見」など、高齢者が直面するそれぞれの問題ごとに現状を示すとともに、施策や取り組み、事例などを紹介していきます。一般に生活弱者と言われる高齢者を「保護の対象者」として捉え、その人権を守っていくためにはどのようにしていくかというお話です。参加者は頷きながらも、どこか冴えない顔をしてお話を聞いていました。
さらに人権の話を広げていきます。
「高齢者の国連原則」に則り、「生きがい」や「ボランティア活動」「当事者会議への参加」等へ話が及びます。これらは高齢者自身が自らの意思で判断し行動できることを保証するもので、「自己実現の原則」「参加の原則」などと呼ばれています。言わば、高齢者を「権利の主体者」として捉える人権のお話です。勝手な振る舞いという意味ではなく「やりたいことに向き合う自分の意思は尊重されるべきであること」「社会に貢献したいという思いは受け止められるべきであること」「自分たちのことを決めるときは、自分たちの意見が反映されるべきであること」などです。
この「高齢者も『権利の主体者』である」という人権のお話を進めていくうち、明らかに参加者の目が輝き始め、前のめりになってくるのが分かりました。
そこで「皆さんは、日々どのような思いでどのような活動をされていますか?」と問うてみました。次々に手が上がり熱い思いを話されます。「私は今も健康そのもので時々サーフィンをやっています。家族も応援してくれています。」「地域で何かできることをしたいと思い学童の通学見守りボランティアをやっています。子どもたちと触れ合ったり、感謝されたりすることがうれしいです。」「『高齢者支えあいネットワーク会議』に参加し、毎回当事者目線の意見を述べています。」など、出るわ出るわ!いきいきと語る高齢者の思いがさく裂します。
誰もが「権利の主体者」であり、自分の思いや意見を大切に扱ってもらえること、これこそ人間らしく生きるために最も必要な人権の一つであると感じました。
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【ふらっと便り】
◆7月 ふらっと 交流スペース展示のご案内◆
『アートスペースからふる作品展』 一般社団法人アートスペースからふる
展示期間:7/4(火)~7/31(月) 最終日の展示は午後3時まで
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『不安の正体 精神障害者グループと地域』
上映時間65分 2021年制作 ドキュメンタリ-
『めぐみへの誓い』
上映時間102分 2020年制作 映画
◆新入荷図書◆
『娘がいじめをしていました』
著:しろやぎ秋吾 /出版:KADOKAWA
『102歳、一人暮らし。哲代おばあちゃんの心も体もさびない生き方』
著:石井哲代:中国新聞社/出版社:文藝春秋
『リエゾン13 こどものこころ診療所』コミック
著:竹村優作/出版社:講談社
『「子供を殺してください」という親たち13』コミック
著:鈴木マサカズ 原著:押川剛/出版社:新潮社
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【つれづれ日記】 ハンドルネーム:ぶり
我が家の近くに年配者の「たまり場」ができている。屋根と椅子と小さなテーブルがあって、行くとコーヒーを勧められ、たまに誰かから焼き芋がもらえたりする。そう教えてくれた70代の母は、お礼にドリップコーヒーを3袋持って、今日もたまり場をのぞいてみるのだと言う。
私の地元も少子高齢化のご多分に漏れず、毎年何人ものご近所さんを見送って寂しくなる一方だ。そんな中、故人を偲んだり、庭に植えた花や野菜の話をしたり、どこからか聞き込んできた面白い話を披露し合ったりして一時を過ごす場ができた。そこは一人暮らしの年配者が今日の話し相手を見つける場所であり、誰かが困っているという噂が持ち込まれては助けられそうな人につながる場所でもあるらしい。
私もゆくゆくは「たまり場」に混ぜてもらって日々を過ごしたい…と夢想していて、はたと気がついた。今50代の私はおそらく、生活のために老年期をずっと働いて過ごすことになる世代だ。「たまり場」で過ごす時間はあるのか?「たまり場」は今の年配者が日々を豊かに安心して過ごすための知恵。私たちも自分の老年期に合った何かを見つける必要がありそうだ。