じんけん放話7「暮らしの中の同調圧力~服装編~」
10月は秋の衣替え。初日から長袖の服に変える人もいれば、気候に合わせて徐々に秋・冬服仕様に変える人もいます。気候的には、その日の服装の判断に迷う毎日かもしれません。
さて、この服装、働く場においては、各組織のルールによって明確に指定されていることもあれば、一定の条件のもとに、個人の裁量が認められていることもあります。ただ、服装を「縛る」のは、明文化されたルールばかりではなく、明文化されていない慣習や規範によるものもあります。この慣習や規範等を個人に強制する現象の一つに「同調圧力」があります。
1)店員の制服
あるお店では、女性店員の制服はスカートで統一されていましたが、少し前からズボンの制服も導入されることに。早速、ある女性店員がズボンを着用したところ、周囲の同僚から「おかしいで、それ」「そんな感じか~」「私は無理」「な~(他の同僚に向けて)→周りは苦笑い」。…しばらくの間、ズボンを着用する女性店員は増えませんでした。
2)スーツを着る男性
ある職場では、ルールではないものの、男性は皆スーツを着て働いています(女性はスーツではない)。そんな中、新しく入った男性社員は、勤務して1ヶ月が経過した頃、スーツではない服で出勤しました。すると上司や先輩から「スーツはルールじゃないけど、来客もあるからねえ。『えっ』てなるんじゃない?」「落ち着いた服でいいっちゃいいんだけど…ねえ」「まあ、少し考えてみてよ」…翌日から、その社員は再びスーツを着て働いています。
同調圧力とは、集団にいる少数派の人に対し、周囲の多くの人と同じように考え行動するよう暗黙のうちに強制することです。「暗黙のうち」とあるように、直接的な指示や命令ではなく、例えば次のような言動を通じて少数派に態度変容を迫るものです。
・多数派に逆らうことに恥の意識を持たせる。
・ネガティブ・キャンペーンを行って少数派が変わり者だとの印象操作をする。
・「一部の足並みの乱れが全体に迷惑をかける」と主張する。
・少数派であることのデメリットを大げさに伝える。
個人の判断で決められることが、同調圧力によって抑圧された結果、何が起きているのか。その中で、誰(その組織全体?)に対してどのような不利益、悪影響をもたらすのか。今回紹介した服装など、あなたの身の周りの暮らしの中から、また、今まさに、メディアが報じる世の中の出来事から丁寧に振り返ってみませんか。あなたが選ぶ服を身に纏って。
*メルマガ第203号<令和10月25日配信>より