じんけん放話10「乗り遅れないように!『○○と人権』
トレンドというといささか不謹慎ではあるが、人権にもその時々で注目を集めた分野がある。県の人権尊重の社会づくり条例も’96年の制定時には「同和問題、女性の人権に関する問題、障害者の人権に関する問題などの人権に関する問題」としていた箇所を、’21年には「人種、国籍、民族、信条、年齢、性別、性的指向、性自認、障がい、感染症等の病気、職業、被差別部落……その他の人権に関する問題」と改正し、制定時以降具体に取り上げられてきた分野を追加している。
では、最近は? ユーチューバーによる私人逮捕が過激化した「インターネット」、G7広島サミットを機に急遽法律が成立した「LGBTQ」、旧ジャニーズ問題から端を発した「性暴力」等々あるが、近年じわじわと注目されているのが「ビジネスと人権」。自社にとどまらず取引先や消費者までも含めて、あらゆる人権について配慮が必要とされ、その取組は人権デュー・ディリジェンス(人権DD)といわれる。
’11年に国連人権理事会において「ビジネスと人権に関する指導原則」が全会一致で支持されて以降、世界各国が取組を進めている。日本はといえば’20年に「『ビジネスと人権』に関する行動計画」、’22年9月に「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を策定。ちなみに’13年には、イギリスとオランダが早々に行動計画を策定しており、24か国目となる日本は遅い取組と言わざるを得ない。
一方、近年企業も取り組んでいるSDGsは、’15年に国連総会で採択、翌年には日本も「SDGs実施指針」を決定。「誰一人取り残さない」持続可能な開発目標として、その理念は人権尊重の社会に通ずる。どちらも人権尊重に関する取組であるのに国内での温度差は、その発信が国連の総会と補助機関の人権理事会の違いから? 企業の負担感から? マスコミへの露出度の多寡から?
人権DDは、経営リスクの抑制や企業価値の向上に繋がる。既に、グローバル企業では取組は進んでいるようだが、中小零細企業であっても取引先や消費者に選ばれるようになれば、ビジネスチャンスも広がる。具体的に何をすればいいのかという声もあるようだが、ネット社会の今、上手に使えば情報はあふれている。取組事例も紹介されている。そして、取り組むにあたっては、ぜひ、これまで個別の人権課題で身に付けた知識や意識がどこまで活かせるか試してみたいもの。
ちなみに、冒頭の県条例に基づく人権施策基本方針も、’22年の改訂では「ビジネスと人権」を共通して取り組む重要施策の一つとして取り上げている。
*メルマガ第206号<令和6年1月24日配信>より